今日は、お寿司で食べると美味しい
ウニについての解説記事です。
でも、
取材したのは地元では食べない、
それどころか嫌われ者で
駆除の対象だったガンガゼウニ。
苦みや臭みが気になり
これまで食べていなかったそうです。
ところが、このウニに・・・。
ブロッコリーの端材
(捨てられていた部分)と・・・。
愛南ゴールド(畑に落ちた個体)を
食べさせると・・・。
なんと!味が良くなって商品になった・・・
というウニの”シンデレラ”ストーリーです。
これこそサスティナブル(持続可能)な
取り組みだと驚きましたので、
その視点で解説します。
◆地域の持続可能性に貢献
愛南町では食べることのなかった
ガンガゼウニの”味変”に取り組んでいるのは
2人の漁師で、
そのうちの1人が吉田弘樹さん(61・外泊)です。
※写真向かって左が吉田さん、
右はサポートする
愛南町水産課の清水陽介さん。
吉田さんは元警察官、
退職後、地元に戻って
ガンガゼウニの畜養に取り組み始めました。
水産業は愛南町の主産業ですが
高齢化と漁業者の減少は深刻です。
そんななか、町が目を付けたのが
「ガンガゼウニは愛南なら
そのへんになんぼでもいる」(吉田さん)
にもかかわらず、
駆除して廃棄していたガンガゼウニです。
駆除の理由は
雑食性のガンガゼウニが藻場を荒らし
生態系を壊すからでした。
そんな嫌われウニが
”シンデレラ”になるまでのプロセスです。
まずガンガゼウニを捕まえ(漁業権が必要)、
カゴに入れて畜養します。
ウニのエサとなるのが
こちらも廃棄処分されていた
ブロッコリーと愛南ゴールド。
「えっ!そんなもん、
ウニが食べるん?」(三谷)と
思ったのですが・・・。
なんと!見事にブロッコリーの
柔らかい部分だけ食べています。
ちなみに、こちらがウニの口。
この口でブロッコリーと
愛南ゴールドを食べると
苦みと臭みが緩和され、
さらに、ほんのりと柑橘の風味が加わって
食用として通用するウニになったのです。
約5年間の試行錯誤の結果、
商品化に成功し、
このほど本格的に販売に乗り出した
ガンガゼウニの”シンデレラ”ストーリーは
サスティナブル(持続可能)な
大きく3つの特徴を持ちます。
1.『設備投資がほぼ要らない』
⇒低コスト、低リスクで始められるため
吉田さんのように退職後の仕事として
また起業の一つとしても有望。
水産業の高齢化や担い手不足に悩む
愛南町の持続可能性に貢献する。
2.『藻場を荒らすガンガゼウニを駆除し
さらに利用』
⇒駆除することで、
エコシステム(生態系)の維持に貢献する。
さらに廃棄していたガンガゼウニの商品化で
資源の再利用・効率化にもつながる。
3.『地域で見逃されていた
無形資産に焦点を当てる』
⇒5年間の試行錯誤の結果、
どの場所で獲れるガンガゼウニが
例えば、身の部分が大きいかなど
海域と個体の関連性が
経験として蓄積(知財化)されている。
さらに自然の豊かさ
(愛南町は国立公園内に位置する)や
漁業権など
愛南町固有の無形資産(金額で表せない財産)に
焦点を当て
価値化することにつながる。
こうした理由から、このウニが
「サスティナブルなウニ」と呼べるというのが
私の結論です。
”シンデレラ”ウニは
ウニッコリーと名付けられました。
◆肝心のお味は?
食べるまでには、針を取り除きます。
殻を割ると(簡単に割れる)、
かなり豊かな身が入っています。
取材の実感では
身は予想以上に大きく
しっかりとしているのですが、
色がちょっと薄いかな?と感じました。
(個体差があります)
身に引っ付いた内臓を
食塩水の中で丁寧に取り除きます。
キレイになったのがこちら。
では、いただきます!
味は
これまで食べられていなかったと
言われれば、
ほんの少し、苦みの様な味覚を感じました。
事前に言われなければ
全く気付かないと思います。
(あくまで私の主観)
大きさはしっかりしています。
値段は70グラム入りのパックで
2,000円。
すし店などに流通する
バフンウニやキタムラサキウニは
同量なら5,000円は超えるそうなので
半値以下です。
吉田さんと清水さんによると
ウニパスタなどの料理にうってつけで
軍艦巻きなどにしても
醤油をつければ、まず苦みは感じないと
今後に期待しています。
大手スーパーから
すでに仕入れの希望を
受けているそうですが、
全てが手作業のため
供給量が少ないのが最大の課題で
現在は地元の道の駅などでしか
手に入らないということです。
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サスティナビリティ(持続可能性)という概念は
これから世界という地理的な広がりと
様々な分野という行動的な広がりを持って
影響力を強める思考の体系ですので
積極的に取り上げたいと思っています。