「違和感」に隠されたもの

オピニオン室

「いま、不登校の子供を持つ親御さんからの相談が、とても増えているんですよ」-。

毎週水曜日の「ニュースな時間」で、不登校などのカウンセリング事例から見える社会の問題を語る、カウンセリングスペース麦の家(ばくのいえ)代表の長谷川美和子さんは、そう訴えます。

引きこもりの男性による事件が相次いでいる今、センセーショナルな報道は、ますます親を追い詰めているといいます。
長谷川さんは「何か困ったことがあるから不登校になるのです。理由は一人ひとりちがう。疲れ切った心をやすめて、ゆっくりエネルギーをためて、じっくり待ちましょう」と、アドバイスをするそうです。
しかし親たちは、頭でわかってはいても「1か月待ちましたが何にも変わりません」「(進級するために)日程が足りなくなるのです」。いつですか、いつですか、いつまで待てばいいのですか…。
そのような返事が返ってくるといいます。

親が不安で焦っているときには、親子関係の小さな変化に気づくこともできません。
だから、一人で抱え込まないで誰かに相談してほしい、必ず道は見えてきますから。
それを伝えたいんですよ、と語ります。

すでに40年近く、4000人以上のカウンセリングにあたってきた長谷川さんがピックアップする相談事例、今月のテーマは「虐待」です。
長谷川さんは「虐待で、私たちのところに相談に来ることは、まずありません。たいがいはそのほかのこと、例えば不登校だとか、不良行為だとか、そんなことで相談にきます」と言います。
主訴は子どもの問題行動ですが、カウンセリングをしていると、ふとした瞬間に虐待の影が見えてくることがあるそうです。
親が不在がちな家で不登校になった弟、よく聞いてみると、密室となった家の中で、兄による激しい虐待行為があったという事例。娘の問題行動について悩む母親からの相談をすすめるうちに、実の父親からの性的虐待が、家庭内で隠匿されていた事例など、虐待は、さまざまに潜んでいます。
長谷川さんは「虐待がある家庭は、親は、まず隠しますよ」と言い切ります。

虐待の存在にどう気づくか。

長谷川さんは、虐待のある親子には、ある「違和感」があるといいます。
たとえば2人並んでカウンセリングを受けていても、なぜか30~40センチ離れて座っている。カウンセリングルームなど、初めての場所は不安になりがちです。良好な親子関係なら、不安な子どもは親のそばにぴったりくっついていますが、離れて座っている親子。さらに親のそばに座る(虐待をする親に身体接触する)ことで、子どもの目は泳ぎ、不安定な表情をみせるといいます。

そんな小さな違和感に気づけるか、気づこうとするか。
すべてのアンテナを向け、子どもが抱えている苦しみに近づくことができるか。それが支援の第一歩だといいます。
家庭での虐待、いじめによる自殺。その存在に気づきながらも、目をそらした学校や機関の対応が厳しく問われる中、長谷川さんがいつも繰り返す言葉が心に残ります。

「真剣に向き合う人が1人でもいたら、必ずその子は救われるんです」-。

きょう(水曜日)の「ニュースな時間」内、16:35頃から放送します。

記者プロフィール
この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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