”戦争こそ最大の人権侵害”と中学生が感じる時代

オピニオン室

3日、東温市で
人権作文・メッセージコンテンストが行われ
県内の小中学生からの
3万点を超える応募の中から
22点が選ばれ、表彰されました。

その取材で
中学生がロシアのウクライナ侵攻を
「最大の人権侵害」と
とらえていることを知り
大変、頼もしく感じ、
また勉強になりました。

楽器のドラムが好きという
活発でハキハキした八幡浜市の中学2年生、
高岡瑞希さん。(南海放送賞を受賞)

「今、一番、人権侵害だと感じるのは
ロシアのウクライナ侵攻」と話します。

また、クリミア半島出身の母親と並んで
話をしてくれた
今治市の中学3年生、白石万理奈さんは
(県人権擁護委員連合会長賞を受賞)
「ウクライナとロシアは
とにかく争いをやめて仲良くして欲しい」と
訴えます。

2人の中学生の人権作文から
”戦争と人権”について考えます。

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高岡瑞希さんの作品のタイトルは
『相手の立場で考える』。

作品で直接、
ロシアのウクライナ侵攻や、
戦争に触れている訳でありません。

市民ミュージカルの演技ワークショップで
様々な立場で演技をした時、
立場の違いで、思いもよらない感じ方や
考え方になることを知った体験を
作文に書きました。

自分でも驚いたというのが
自分が悪いと
明らかに分かっているケースでも
口論が続くと
引くに引けない心情が生じたことです。

作品に込めた想いと
今の社会との関係について聞いたところ
高岡さんは
ロシアとウクライナの現状を打開するには
『相手の立場で考える』ことも
必要なのでは・・・と冷静に分析しました。

同時に、「今、最も人権侵害を感じるのは
ロシアによるウクライナ侵攻」と
はっきりと主張しました。

悲惨な状況に感情的になるばかりでなく
人権という視点で戦争をとらえる姿勢を
頼もしく感じ
逆に、勉強させられました。

ロシアによるウクライナ侵攻に心を痛め、
心情を直接、作文に書き込んだのは
白石万理奈さんです。

タイトル『いろんな「私」』では
母親がクリミア半島出身で
自分にもロシア人の血が流れている事実を
明らかにし、
ロシアが戦争を起こしてはいるが
ロシア人が皆、悪いわけではないと
心情をつづります。

一方で
社会に「多様性」を認める声が多くなり
ロシアとウクライナの血を受け継ぐ
日本人の自分にとっては嬉しい、
と前向きな気持ちも書き込みました。

2つの母国の戦争状態に、母親は
「ロシアが侵攻してきた。
ウクライナからロシアが出ていかないと
戦争は終わらない」ときっぱり、
その隣で白石万理奈さんは
「とにかく仲良くして欲しい」と素直に心情を
語りました。

この数年
人権作文・メッセージコンテンストの
取材を行う度に
人権問題はその時々、時代時代の
社会の”ひずみ”をあぶり出す
鏡の様な存在だと感じます。

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平和な時代が続く日本は
これから「戦争」を
世代を超えてどのように伝えてゆくか、
また世代を超えて、共に、
戦争を起こさない国を創っていくかが
課題になっているのではないでしょうか。

77年前の戦争の”悲惨さ”を語り継ぐのは
もちろん大切です。

合わせて
「戦争は最大の人権侵害」という視点で、
冷静に現実を分析し、歴史として学び、
知恵として伝えることも大切だと
今年の人権作文・メッセージ
コンテストに出席して、
小中学生から教えられました。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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