参院選⑥実は色々あった選挙戦・・・取材現場から

オピニオン室

投票率は過去最低の48.81%

『当確 山本順三(自民・現)』は
午後8時の投票締め切り直後。

国の行方を左右する
争点盛りだくさんの
選挙だったはずですが、
県内の選挙戦は終始、盛り上がりに
欠けました。

しかしドラマがなかった訳では
ありません。

選挙取材では常に
”人間臭い”ドラマに遭遇します。

◆労組の動きが鈍かった?

歴史的に労働組合の票が強く
野党と自民党が”激戦”を繰り広げる
西条市と新居浜市。

去年の衆院選愛媛3区でも
野党の白石洋一さん
(立憲・比例復活)の得票が
当選した井原巧さん(自民)を
上回っています。

しかし今回の参院選では
2つの市ともに
当選した山本さん(自民)の得票が
高見さん(野党統一候補)を
上回りました。

選挙中、
「労組の動きが鈍い」という声を聞き、
取材したところ
「もともと労組票のピークは
民主党政権が誕生した2009年あたりで
その後は組織率の低下もあって
まぁ、こんなもん」(野党関係者)。

という見方がある一方、
「普通、頼みに行くと
”もう頼まれた人がおるんよ”と
与野党が鉢合わせることが結構、ある。
でも今回は、そういうのが少なかった」
(与党関係者)との声も。

◆野党には”お家の事情”も

野党には
旧民主党の流れをくむ
立憲民主党と国民民主党の分裂という
”お家の事情”があり
「立憲民主党から推薦を受けると
(高見さんは立憲民主党と連合が推薦)
どうしてもその色がついてしまい
国民民主党の票が逃げる」
(野党関係者)。

こうした内輪もめ、つまり内向きの論理が
運動員一人ひとりの”外向きの熱意”を
削いでしまった可能性はあります。

高見さん個人とは全く関係のない
政党レベルでのオウンゴールといえます。

◆自民は安全運転を心がける?

自民党は
「岸田首相はジェントルな雰囲気で
支持率も高い。
波風立てず粛々と安全運転が一番と
争点隠しに終始した」(野党関係者)。

「緩むのを最も警戒したと思う。
陣営も度々、引き締めたし
最後まで油断せず、しっかりと
というのが戦略といえば戦略」
(与党関係者)。

このあたりの内実は
昨夜、放送したYouTube特番の
永江さん(参議院議員・無所属)や
井原さん(衆議院議員・自民県連会長)への
生インタビューでより詳しく触れています。

ご覧ください。

◆自民県連は”お家の事情”解決?

「今回の選挙では
自民県連はとても雰囲気が良かった。
県連会長の井原さんの
人柄もあるのかなぁ」(与党関係者)。

自民党県連は
県議会議員の中で会派の分裂問題があり
長く選挙にも
その”内輪もめ”が影響していました。

しかし
党内融和のこれまでの努力が
徐々に実を結びつつあり、
今回の参院選では
強い一枚岩の県連組織が
復活したのではないかという声も
あります。

秋には松山市長選、知事選があり
来春には県議選もあります。

もちろん解散総選挙は
いつあってもおかしくありません。

岸田首相は
「黄金の3年」(選挙のない3年間)を
手にしたといわれますが、
長期政権を狙うなら(狙うのは当たり前)、
どのタイミングで解散総選挙に
打って出るか?
まさに安倍元首相の長期政権を
お手本にするはずです。

◆立ち位置が難しい野党候補

野党統一候補の高見知佳さんの得票は
173,229票。

過去5年間の野党候補の得票と比較して
2番目に低く、
自民党の対立軸として
反・非自民票をまとめきれたとは
いい難い数字です。

一方、NNN系列の出口調査では
無党派層の投票先で
高見さんが山本さんを上回っています。

高見さんに
一定の期待が集まったのは事実で、
低い投票率を考えると
掘り起こされないまま
眠っていた支持票があったとも
考えられます。

*****

愛媛の選挙の歴史を振り返ると
野党は
いかに保守層の中の
自民批判票を取り込むかが
大きなカギを握ります。

その場合の政治的立ち位置を
どこに置くか?が重要になります。

ちょっと
サッカー選手のポジションの取り方に
似ているような気もします。
(私はサッカーのずぶの素人)

高見さんの場合は
立憲民主党だったわけですが
(無所属だが、推薦を受け
応援演説の顔ぶれをみると
有権者にはそうみえた)、
例えば、永江さんのように
全く立ち位置を示さない
(”自民ではない”のみ)やり方もあります。

自民党に勝つためには
世論というボールを
自分が選んだポジションで受け止め
チームメイト(複数の野党)と連携し
つまり、パスでつなぎ
最後はきっちり本人の能力で
ゴールに蹴り込む・・・
それが勝ちパターンの
イメージではないでしょうか。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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