参院選⑤企業が投資に”二の足を踏む”理由

オピニオン室

今年2月、西条市の
アサヒビール四国工場が
来年1月で
操業を終了すると発表しました。

理由は
「最適な生産体制を
全社的に構築したい」
(アサヒグループホールディングス)

コロナ後の県内経済の
ニューノーマル(新しい常態)に
不安を感じる
企業の判断でした。

玉井敏久市長は
「現在はアサヒビールが
土地をどうするか、
判断を待っている段階だが
すでに2社から引き合いはあった」
と明かし、
「アンダーで(水面下で)
まとまった土地が欲しいという話は
結構ある」と、
企業の投資意欲について
肌感覚は決して悪くないと話します。

◆コロナ禍のさ中に積極投資も

もう一つの西条市を代表する工場。

半導体を製造する
ルネサス セミコンダクタ
マニュファクチュアリング西条工場。

ルネサス エレクトロニクスの
完全子会社ですが、
ルネサス エレクトロニクスの
今年1月から3月までの第一四半期
(12月決算)の連結売上高は
前期と比べ70%超増益の3,467億円。

有価証券報告書によると

・イギリスの半導体会社
ダイアログセミコンダクタの買収効果

・自動車の1台あたりに積載する
半導体売り上げの継続的な伸び

を主な理由に上げています。

買収は去年8月に完了していますから
コロナ禍のさ中に
積極投資(買収)していたことになります。

ルネサス セミコンダクタ
マニュファクチュア西条工場と
地元経済の関係について
玉井市長は
「景況の波が大きくて、しかも短い。
まさに大波が
度々、やってくるみたい。
例えば、期首の成績と期末の成績が
極端に違うということもありえる」

「地元の関連する会社
つまりクラスター企業も
あまりの不安定さに閉じてしまった」
と悩ましさを語ります。

*****

ルネサス エレクトロニクスの
株主上位10社には
デンソー、トヨタ自動車
日本電気、日立製作所、三菱電機が
名を連ね、
まさに日本の自動車&電気 連合軍。

リスクを分散しつつ
規模のメリットを追求しないと
技術革新のスピードや
景況の波の大きさに
対応できない現状がみてとれます。

「企業は先が見通せない中、
リスクをとりにくい状況。
国が成長分野を見据え、
大きな方針を示し、
企業の投資を
バックアップする体制が必要」
(玉井市長)

国も『経済安保』の観点から
今年5月に経済安全保障推進法を成立させ
半導体など重要物資の
国内での生産態勢の強化を図る方針です。

◆取材を終えて

西条市にとって
大企業の工場も大切ですが
実は、玉井市長は
「西条市民の
平均所得をアップさせるには
本当は農業所得を
上げることがポイント」
と課題を上げます。

操業終了を決めた
アサヒビール四国工場の
正社員は58人。
農業人口とは比較になりません。
(もちろん58人にとって
配置転換や再就職は
大きな問題ですが)

世界と闘う企業、
そして
地域の気候風土とともに
人々の生活を支えてきた農業の
両方を基幹産業とする西条市。

第1次、第2次、第3次産業という
産業の古いカテゴリー区分(垣根)が
ITによって崩れ始めている今、
世界を見据えたグローバル企業から
人々の身近な生活に根差した農業まで
多様な産業構成で
いかに個人の所得を上げてゆくか?

地方が共通して抱える課題の
1つの成功モデルに
西条市は挑戦しているように
感じました。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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