「肥料の価格が徐々に
上がっている。
10%から20%くらい。
主力の早生温州ミカンは
他の高級柑橘と違って
値上げは難しい。
利益を圧迫する」
(八幡浜市のミカン農家)。
資材価格の高騰とインフレの足音が
県内の農村部にも忍び寄っています。
参院選を前に
コロナ後のニューノーマル(新しい常態)
を探るシリーズ。
3回目は八幡浜市です。
【ニューノーマルへのポイント】
①円安の真の原因は国力の低下
②円安による資材価格の上昇は
漁業やミカンなど基幹産業にダメージ
③大家族を再評価し、多世代間で
助け合う少子化対策モデルを研究
「円安は
地元の2大産業・魚とミカンを
燃料費の高騰と、
肥料価格の上昇というかたちで
圧迫し始めている」
(大城一郎市長 57歳)
「少子化による人手不足に加え
温暖化が海と山を痛めている」と
地域産業の持続性に危機意識を持ち
「国力が低下している」
と結論付けます。
参院選の大きな争点とみています。
◆ミカン農家は
円安を生産性アップで乗り切れるか
ミカン農家にとって
”肥料やり”は、品質を左右する
重要な生産工程の一つ。
種類、やり方、頻度などは
いわば企業秘密。
あまり表だって
価格の上昇問題を口にしません。
そんな中、
八幡浜市の高級ミカン産地の
ある農家は
「肥料価格は
10%から20%上がっている。
これから農薬も
もっと上がると聞いている。
ミカン農家にとって
人件費、農薬、肥料は
欠かせない生産コストなので
やっかいな問題」と身構えます。
◆機械化やIT化で、
量と付加価値アップに取り組む
主力の早生温州ミカンには
消費者に長年、慣れ親しまれた
価格があり、コスト高を
価格に転嫁するのは難しいといいます。
「円安による
資材価格の上昇を乗り切るには
生産性をアップするしかない」
(前出の農家)
生産性のアップには
①量の面からのアプローチと
②価値の面からのアプローチを
あげます。
・量の問題は
機械化によって、
単位労働力あたりの
収量をアップさる。
・価値の問題は
加工によって商品価値を高めたり
冷蔵技術の革新で出荷の端境期
(通常、市場に出回らない時期)にも
出荷可能な態勢を整える。
また、積極的にITを利用した
マーケティングなどを
考えています。
機械化、IT化、
さらに生産規模拡大といった積極策で
インフレというニューノーマルに
適応しようとしています。
◆反転の思考?大家族の再評価
「20年以上続いたデフレから
コロナを経て、インフレへ」という
”経済の180度反転”には、
『反転の思考』で対応しようと
大城市長は、ある研究を
職員に指示したといいます。
「多世代間で助け合う
大家族を活かした幸せづくりについて
研究するよう指示した」
(大城市長)
都市部では核家族化が進み
本来、幸せを感じるはずの子育てに
不安すら感じる現状があります。
そこで、
地方ならではの大家族に着目し
地域コミュニティも巻き込み
多世代、多人数で
協力して子どもを育て、育もうという
アイデアです。
◆取材を終えて
資本主義は個人を大切にし
市場の競争を通じて、
個人の能力を最大限、引き出そうという
「主義」(経済制度)です。
しかし、それは
孤独と表裏一体でもあり
子育ての分野では
孤立化した家族が子育てに不安を持ち
少子化の原因の一つになっている面が
あるのではないでしょうか。
「大家族の価値を再評価してみよう」
という問題提起は
価値の押し付けでない限り
”反転の思考”として
地方ならではの可能性ではないかと
感じました。