アコヤ貝大量死と真珠価格の『深層』  

ニュース解説

愛媛県が誇る真珠を育てる
アコヤ貝の大量死から、
この夏で3年を迎えます。

真珠には2種類の養殖業者が必要

真珠養殖には2つのアコヤ貝が必要で、
産地の宇和海沿岸には
2種類の養殖業者がいます。

①人工ふ化させたアコヤ貝を
およそ1年半かけて
稚貝から母貝にまで育てる
「真珠母貝養殖業者」。

②もう一方は、母貝を仕入れ
その中に真珠の元になる核を入れ、
数か月から1年あまりかけて
真珠を育てる「真珠養殖業者」です。

 

 

 

 

大量死が統計データに暗い影

アコヤ貝大量死の影響は、
統計データからも読み取れます。

愛媛のアコヤ貝生産量・販売額
(年計・農水省まとめ)
2018年/1055トン 11億8400万円 
2019年/   832トン 10億6500万円
(大量死発生年)
2020年/  407トン   4億5600万円

愛媛の真珠生産量・販売額
(年度計・愛媛県漁協まとめ)
2018年度/6940キロ 61億  846万7000円 
2019年度/6074キロ 53億2360万2000円
(大量死発生年)
2020年度/3524キロ 34億8638万4000円
2021年度/3264キロ 44億6460万8000円

大量死を境に
アコヤ貝の生産量及び販売額は半減。

真珠の生産量も
同じく半減していますが、
販売額は
大量死前の7割をキープしていて、
アコヤ貝(母貝)ほどは
落ち込んでいないことが分かります。

なぜ、なのでしょうか?

真珠は“作れば売れる”環境に

真珠は、タサキやミキモトなどの
商社と呼ばれる加工販売会社が
宇和島市の入札会で仕入れ、
香港などの海外商談会を通じて
販売します。

コロナ禍で、この2年間は
海外商談会自体が中止されました。

しかし逆に
真珠の希少価値が高まり
真珠の販売に携わる関係者によると
世界の富裕層から
「真珠が欲しい!」との声が
強まっているということです。

入札会では数少ない真珠を巡って
争奪戦が繰り広げられ、
単価が上昇していると見られます。

恩恵に預かれない真珠母貝養殖業者

しかし単価が上昇している真珠に対し
真珠母貝養殖業者が生産する
アコヤ貝の価格は
依然、低いままとなっています。

なぜ、なのでしょうか?

原因は一つではありませんが
真珠が高値で売れても、
それに連動して
アコヤ貝の販売価格を上げてこなかった
業界独特の慣習があることが
分かりました。

あくまでアコヤ貝は真珠生産の原材料、
資材として扱われているというのです。

ある真珠母貝養殖業者は
「子どもには継がせたくない。
自分の代で終わりにしたい」など
将来に希望が見出せない
厳しい胸の内を明かしてくれました。

大量死と共存する愛媛の真珠産業

大量死の原因ウイルスが特定され、
それを検出できるPCR検査も確立され
一歩前進となった真珠産業ですが、
アコヤ貝には抗体が無いため、
人間のように
ワクチンを投与して
アコヤ貝を守ることが出来ません。

解決策はウイルスそのものに
強い貝を、研究によって
作り上げるしかありません。

それには長い年月が必要です。

当面はウイルスと共存するしかない
という難しい闘いに
愛媛の真珠産業は直面しています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
中武正和

1975年11月松山市生まれ。南海放送南予支局(宇和島駐在)記者として一次産業を中心に様々な話題を取材。西日本豪雨は発生時から被災地で取材活動に従事。2021年4月から県庁担当記者。南予・東予から届く支局の話題を分かりやすく解説します。

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