大地震への備え「出社しない放送」

オピニオン室

5月29日、南海放送では
報道部を中心に
大規模な地震訓練を行いました。

今回の訓練の新たな課題が
「出社しない放送」。

会社に「集まらない放送」です。

そもそも、これまでにも
様々なケースを想定した
訓練を行ってきましたが、
いかに「少ない人数」でも
確実に放送が出来るかという
前提条件がありました。

具体的には
会社の近くに住む従業員から
徐々にスタッフが集まり始め
情報収集や取材・中継にあたる
というのが訓練の基本。

しかし
大規模な災害が発生した際、
放送スタッフ本人やその家族も
被災者となる可能性は
避けられないと考えるのが
自然です。

さらに、大規模災害では
長期間に及ぶ放送が
想定されます。

限りある人員でいかに
放送を持続させるか。

短期、中期、長期で
放送の体制を
あらかじめ組み立てておく
必要があります。

 

そうした課題に向き合う
新たな訓練が
「出社しない放送」、
「集まらない放送」です。

今回が初めての試みでした。

その放送を実現する
有力で強力な武器(ツール)が
スマートホンです。

訓練では
電柱の倒壊で道路が不通になり
出社が不可能になった、
などの状況を想定し
記者やカメラマンが
スマホのFaceTime機能を
利用して、自宅やその周辺からの
簡易中継にチャレンジ。

出先のスタッフが
スマホで撮影した映像を
専用のサイトに投稿して共有、
いかに少ない手間で放送につなげるか
という試みもありました。

さらに避難先などで
テレビが見られる環境でなくとも
放送を届けられるよう
テレビのオンエアをそのままYouTubeで
ライブ配信することも実験しました。

 

浮かび上がった課題もあります。

①限られたスタッフで
どの作業を優先すべきか。

②スマホ中継を有効活用するには
別の周辺機器が必要なのではないか。

③そもそも災害によって
通信環境が悪化していたら…

 

また私自身は今回、
キャスターとしてではなく
デスクという立場で情報集約、
放送へ向けての原稿化などの
業務を担当しました。

今年も雨のシーズンは目前です。

有事の際には
怒涛のように押し寄せる
膨大な情報の中から
何を、どのように伝えれば
“命を守る放送”になるのか。

 

こうした定期的な訓練と
訓練内容のバージョンアップ、
さらには日々、進化するITを
いかに放送に活かすか。

終わりのない
課題と向き合い続けるのが
災害報道だと改めて感じました。

記者プロフィール
この記事を書いた人
松岡宏忠

奈良県大和高田市出身。2005年に入社し
2009年の「NEWS CH.4」番組開始とともに
フィールドキャスターに。
2013年からキャスターを務める。
2021年春からはデスク業務にもあたる。
好きな言葉は「毒蛇は急がない」。

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