去年、20隻以上の漁船が焼失した
伊予市の大規模火災から一年が経ちました。
苦境に立ち向かう漁師の物語です。
※詳しくは動画で!
21隻の漁船が焼けた大規模火災は、
去年4月26日、伊予市の
上灘漁港で起きました。
漁師20人が所属する
漁業団体・共栄網では、
カタクチイワシ用の漁船10隻のうち、
8隻を失いました。
地元の消防は、最終的に
「原因不明」と結論付けています。
※※※
「漁船が欲しい」 漁師の思い
共栄網の副会長で、漁師歴26年の
和田直樹さん(48)は語ります。
■和田さん
「辛さや無念さは、もちろんある。
後悔することなく、これを区切りに、
しんどい思いをしたのだから
もうこれ以上のことは無いと思って
先に進む方がいい」
港には、火災を免れた
2隻の漁船がありました。
■和田さん
「この船が残ってくれたおかげで
去年はイワシ漁ができた。
これが焼けていたら、共栄網は
持ちこたえていなかったかもしれない」
新造船の建造費は1隻あたり約4000万円。
このため和田さんは、
中古漁船で再建することを決め、
これまでに4隻を確保。
さらに伊方町の水産会社から
追加で2隻を調達する計画です。
減った売上げ どうカバーする?
火災の被害で
共栄網のカタクチイワシの漁獲量は、
火災前の3割にとどまり
売上額も約8000万円と
3分の1に落ち込みました。
このため水産加工施設も
長期にわたり
休業せざるをえませんでした。
そこで漁師たちは、
新たな収入の確保に乗り出しました。
新たにスーパーのフジとの
商談を成功させ、去年8月から
“頭とり上灘いりこ”の商品名で
販売をスタートしました。
■(株)フジ・リテイリング
バイヤー 小松征浩さん
「商売道具の船が燃えたと知り、
何か協力できないかと思い、
商談を進めた」
「エグミのある
イリコの頭を落とすことで
おつまみやおやつ感覚で
食べやすいといった声があり、
とても好評な商品となっている」
イワシ以外の魚で副収入
漁師たちは、
イワシ以外の魚にも漁の範囲を広げ
収入を補おうという試みにも
取り組んでいます。
イワシ用の巻き網漁船とは別の
“流し網漁”が行える船で
サワラを狙います。
日の入り前に網を海に投入し、
待つこと2時間。
待望のサワラです。
■インタ 和田さん
「イワシが獲れるのが一番だけど、
これはこれで自分たちの
生活の足しになるのであれば」
女性たちも頑張る
このほか、週末限定でオープンする
“海の産直市”まるきょうを
道の駅ふたみの近くに開設。
漁師の妻たちが交代制で働き、
じゃこ天やたこ飯などを
提供しています。
再起を図る上灘・共栄網の漁師たち
来月からは、これまで確保した
漁船と合わせ、
6隻での出漁が予定される共栄網。
逆境をはねのけ、常に前を向く姿に
取材する側の私も
勇気をもらいました。