ニュースのウラカタ#36「令和×遍路」
今回は、ニュースのウラカタではなく、バングミのウラカタ(ディレクター)だった時代の話です。
私は88の寺から成る四国霊場の寺のすぐ近くで生まれ育ちました。43番札所・明石寺(めいせきじ)です。以前取り上げた「宇和町かるた」にも登場します。
”お遍路の 四十三番 明石寺”
線香の匂い、賽銭箱の音、縁日の賑わい、除夜の鐘の響き、写生大会の暑さ、クワガタムシ獲りの歓喜…、幼い頃の記憶がたくさん蘇ります。
南海放送に入社して最初に配属されたのが、テレビ番組の制作セクションでした。以来11年間「もぎたてテレビ」を中心にディレクターとして番組制作に携わりましたが、四国霊場の寺の近くで生まれ育ったという生い立ちもあったことから、入社3年目に「遍路」をテーマにした全国放送番組のディレクターを任せてもらいました。
三味線の道を志す東京の24歳の女性が、四国の遍路道を歩くドキュメンタリーです。日本にはかつて、三味線を手に旅をしながら、家々で門づけして生計を立てる盲目の女性たち・瞽女(ごぜ)がいました。24歳の女性は、三味線の”技と精神”を高めるため、瞽女と似た体験を四国の遍路道に求めたのです。寺や道中で出会った地元の人や他のお遍路さんの前で三味線を演奏します。最終目的は、そんな出会いや四国の自然をヒントに、新しい三味線の曲を作ること。私はその遍路旅に同行して、ほぼ1年に渡り取材を重ねました。
彼女は、中断せず一度に全ての寺を参拝する”通し打ち”ではなく、都合に合わせ中断しながら寺を巡る”区切り打ち”だったので、少し長い時間がかかったのです。それでも、1200キロとも1400キロとも言われる歩き遍路の道を完全踏破。「遍路組曲」という歌曲を完成させました。一方、テレビ番組「娘三味線遍路旅」は全国放送され、彼女の遍路旅や遍路組曲、また四国の遍路道のすばらしさが反響を呼んだほか、国内の権威ある賞を受賞することができました。
CH.4では今後、シリーズで「菩提の道場をゆく・令和編 ~悟りの伊予26ケ寺~」を、月1回ペースで放送していく予定です。開基より1200年の時を経て、令和の今なお人々を引き付ける四国の遍路道。自然はもちろん、令和のお遍路さんとの出会い、地元の人おすすめのおいしいものも登場します。
初回は今日(5月19日)、高知から愛媛に入って最初の札所、愛南町にある40番「観自在寺」です。放送後、CH.4公式YouTubeチャンネルにもアップします。