西日本豪雨1年③教訓を『愛媛モデル』で全国へ

ニュース解説

「浸水するはずがない」「ダムが守ってくれる」”と思っていた”。ダムの緊急放流で肱川が氾濫し、5人が死亡した西予市野村町でよく聞く言葉です。これは単なる”住民の楽観”ではなく、行政レベルでも”油断”があったことは、野村ダム下流域に『浸水想定エリア』が存在すらしなかったことに現れています。

◆野村ダムが全国の”モデルケース”に

野村ダムは今回の教訓を糧に、全国初となる取り組みを大きく2つ、今年の雨期から実施しています。

①”3時間前ルール”を規則に盛り込む

西日本豪雨災害で死者が出た大きな原因の1つに、西予市が「避難指示」を出してから、野村ダムが「異常洪水時防災操作」を行うまでの時間が、わずか1時間10分間しかなったという事実があります。(「操作」を行えば、浸水被害の恐れがあることは分かっていた)

この反省から、ダムは「操作」に入る3時間前には市や関係機関に通知することとし、ダム操作規則細則に新たに盛り込みました。

操作規則の変更は、野村ダムの37年の歴史の中で2度目。1度目は、1995年の大洲市の浸水被害を受けての変更でした。

②関係機関への通知文の一新

通知に使う文書の書式も一新しました。これまでの通知文は放流量を記載するなど、危険レベルや緊急度が分かりにくく、住民への避難情報として役立っていないとの批判がありました。

国は、報道機関からも参考意見を募るなどし、『ただちに命を守る行動をとってください』など分かりやすい、より具体的な表現と内容に改めました。

◆『愛媛モデル』が全国標準に

この他にも、ユニバーサルデザインの導入や警報スピーカーの向きの変更といった細かなものまで、西日本豪雨災害を教訓に様々な改善策に取り組みました。

今後、全国の他の地域のダムもこの方向に倣い、『愛媛モデル』を参考に、より効果的で役に立つ規則や書式づくりに取り組むことが予想されます。

◆西予市・自らを行動計画で”縛る”

一方、住民を避難に導く最後の”砦”となる西予市も、有事に取るべき行動を、事態の深刻さのレベルに応じて、時系列で示す『タイムライン』(防災行動計画)にまとめました。

去年7月7日、野村町の「避難指示」(午前5時10分発令)が「異常洪水時防災操作」のわずか1時間10分前と遅れた原因の1つに、①明るくならないと混乱すると考えた ②消防団の待機が完了するのを待った ③まだ、時間的余裕があると判断した、といった判断ミスがありました。

人間の判断は、場当たり的な判断に陥るリスクがあるため、タイムラインでは「操作」が始まる3時間前にダム側から通知を受けた場合や、ダムの流下量が500トン/秒を超えた場合などには「避難指示」を発令すると明記しました。

行動計画で自らを”縛る”ことで、判断ミスを排除しようという備えです。

◆今年、試される”備え”、常に検証を

国は西日本豪雨を教訓に、新たに直感的に理解できる「警戒レベル」による防災情報を伝えることになり、市町がその発信源となりました。

きょう(25日)までに、西予市では7日と14日に『警戒レベル3』を経験し、「避難準備・高齢者等避難開始」を発令しました。

その際、早速、新たに取り組む「緊急放送に合わせてのエリアメール」も配信され、”備え”を実践しています。

取材を通して、西日本豪雨が大きな被害をもたらした原因の1つに、備えの不足や判断ミス、さらに情報伝達の稚拙さがあったことは否定できないと感じました。

愛媛県地方はきょう現在、まだ梅雨入りしていません。

今後、”備え”が試されるとともに、実際の効果や、効果の予測を評価し、住民と共に、よりよい行動計画に”生まれ変わらせる”柔軟性も必要だと感じました。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(54歳)立教大学卒。1988年南海放送入社後、新居浜支局記者、県政担当記者などを経て、報道部長。現在、執行役員報道局長・解説委員長

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