ワタリガニ激減・・・“異変の海”理由は

オピニオン室

養殖魚の生産量が42年連続で
全国1位を誇る愛媛県。

一方、今、
瀬戸内海で天然魚の漁獲量が
落ち込んでいるという事実を知り、
実際の漁に同行しました。

※詳しくは動画で!

漁獲量はピーク時の3分の1 

瀬戸内海の漁獲量
(魚類全般)を表したグラフです。

ピーク時(1977年)と比べ、
おととしは約3分の1に
落ち込んでいます。

燧灘のワタリガニは…

先月末、西条市壬生川で
燧灘のワタリガニ漁に同行しました。

すると…

10時間の漁で獲れたワタリガニは
わずかに5匹。

同じ日に燧灘で漁を行った
他の漁師に聞くと、
「ゼロ」や「1匹」など
ほとんど獲れていません。

地元の市場で聞くと
今シーズンのワタリガニは
例年のおよそ10分の1ということでした。

■漁師 近藤高行さん(29)
「昨シーズンは、いい日で
50匹は獲れていたが、
今シーズンは良くて二桁くらい。
ちょっと異常です」

■漁師 渡邊雄斗さん
「今年は異常なくらいおらん。
悪かったらゼロの日という日もあるし。
頭を抱えます」

ワタリガニ(がざみ)は
愛媛の瀬戸内海全体で
おおむね8年から10年程度の周期で
増減を繰り返し、
おととしは過去最低の
98トンを記録しています。

※※※

原因は?

県水産研究センター
栽培資源研究所(伊予市)で聞きました。

考えられる原因①海水温の上昇

加藤利弘所長によると、
地球温暖化の影響で燧灘の海水温は
この50年で0.9度上昇しています。

温暖化はワタリガニの生息域に
影響を与えていて、
加藤所長によると
かつては獲れなかった
東北の宮城県で漁獲が確認されています。

温暖化によって、瀬戸内海でも
魚介類の産卵場が変化したり、
幼稚魚の生存率が影響を受けたりする
可能性はあるということです。

考えられる原因②栄養塩の減少

栄養塩、馴染みが無い言葉ですが、
加藤所長は「“海の肥料”と
捉えてもらうと分かりやすい」と
説明します。

栄養塩は、窒素やリンなど塩類の総称で、
魚のエサとなる
植物・動物プランクトンをはじめ、
海藻やノリなどの増殖に必要な物質です。

瀬戸内海では、この栄養塩の減少が
確認されていて、このため
資源が連鎖的に減少している可能性を
加藤所長は指摘します。

瀬戸内海では近年、
ノリの不作が問題となっており、
主な原因は栄養塩の減少だと
考えられています。

考えられる原因③藻場の減少

藻場は、幼稚魚のいわば“保育場”です。

藻場は瀬戸内海を含む
全国の8割以上で減少し(=磯焼け)
魚が育ちづらい環境が
拡大していると言われています。

今、講じられる対策は…

地球規模の温暖化が原因の
①海水温の上昇については、
温室効果ガスの削減が考えられます。

②栄養塩の減少を
食い止めるためには
海底を掘り起こし、
海底の塩類を海水に供給する
海底耕うんという方法が
効果があるといわれています。
※愛媛では実施されていない

このほか、下水処理場の運転を
緩和することによって
ある程度汚れた排水を海に流し
塩類を供給することが出来ます。

③藻場の減少は、
藻場を再生しようという活動が
全国で行われていて、
西条市藻場づくり環境保全協議会では
2009年からアマモ場の保護のため
種子の採取や移植活動などを
行っています。

瀬戸内海の異変は
漁業者の所得減少に繋がる
重大な課題です。

記者プロフィール
この記事を書いた人
中武正和

1975年11月松山市生まれ。南海放送南予支局(宇和島駐在)記者として一次産業を中心に様々な話題を取材。西日本豪雨は発生時から被災地で取材活動に従事。2021年4月から県庁担当記者。南予・東予から届く支局の話題を分かりやすく解説します。

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