2019年夏以来、
アコヤ貝の大量死に悩む
愛媛の真珠業界に、
今週、“大量死の原因ウイルス特定”という
大きなニュースが飛び込んできました。
大量死の原因は新種のウイルス
宇和海では、2019年の夏に発生した
アコヤ貝の大量死で
約3億円の被害が出ています。
大量死はその後も2年連続で発生し、
国の水産研究・教育機構と
愛媛県水産研究センターが
アコヤ貝の稚貝の遺伝子を解析するなど
原因を調べていました。
その結果、一昨日(1日)、国と県は
ビルナウイルス科の
新種のウイルスが原因だと特定した
と発表しました。
このウイルスを検出する
遺伝子検査の方法も確立され、
今後は海水やアコヤ貝で
ウイルスの有無を調べることも可能になり
今後に期待が高まっています。
愛媛県漁協トップは…
■愛媛県漁協 平井義則組合長
「養殖業者はみな不安を感じていたので、
原因が特定されたことは一歩前進だ。
解決には時間がかかるが、
早期に対処法が見つかるよう期待したい」
先月、宇和島市で始まった真珠入札会で、
1グラムあたり4175円と
前回をおよそ800円上回る
平均単価(初日)を記録した
愛媛の真珠業界にとって、
原因ウイルスの特定は
明るい話題となりました。
■平井組合長
「入札会では、
中国向けによく売れている
8ミリ珠の単価が良い」
新型コロナの経済対策として
各国が大規模な金融緩和を行った結果、
中国など一部の富裕層で金余りが生じ、
真珠や宝石、それに
高級腕時計などの装飾品は
世界的に販売が好調となっています。
そんな中、愛媛の真珠は
アコヤ貝大量死が真珠の減産を招き、
昨年度分(入札販売量=生産量)は
前年度の約58%にとどまり、
今年度もそれ以上、減る見通しです。
つまり、生産数が少ないため
真珠の単価が上昇しているのです。
原因特定でアコヤ貝大量死は終息する?
実は、原因特定が
問題解決に直結する訳ではありません。
①アコヤ貝には免疫が無いため、
新型コロナのように
ワクチンによる感染対策はできません。
②根本的な解決法は、
ウイルスに感染しても死なない
強い貝づくり(選抜育種)しかありません。
新種のウイルスだと原因が特定されたことが、
今後、選抜育種のスピードを速めることは
ほとんど無いということです。
ただ、遺伝子検査によって
ウイルスの存在しない海域での
養殖(防疫措置)が
前進する可能性はあります。
※※※
原因ウイルス特定という一つのステップが
大量死問題の
直接的な解決策にはならないものの、
ウイルスの特定は
科学技術の進歩を感じる話題、
そして、対策への第一歩として
養殖業者を中心に
好意的に受け止められています。
人類がコロナウイルスと闘う今、
アコヤ貝も
ウイルスとの闘いを強いられています。