「おせっかいおばちゃん」になりませんか

「誰か一人でもいれば、救われるんです」-。

松山市在住のカウンセラー長谷川美和子さんの言葉です。長谷川さんは、不登校の子どもを支えるフリースペース「麦の家(ばくのいえ)」を主宰し、カウンセラーとして、30年以上にわたり3000人以上のカウンセリングにあたっています。

長谷川さんは、暴力や犯罪など反社会行動を起こす子ども、不登校を繰り返す子ども、育児放棄の家族、DV連鎖の家庭、など、様々な事例に対応してきました。毎週水曜日、ラジオ「ニュースな時間」のなかで、カウンセリングの事例を通して、現代社会の課題や、私たちが学ばなければいけないことについて話していただいています。

連日、心がえぐられるような事実が明らかになっていく、野田市の小学4年生の心愛さんの事件。あまりの残酷さに、そのニュースが始まるとテレビやラジオの音を消してしまうという友人も何人もいます。「ゆるしてください」という文字をつづった、東京目黒区の5歳児結愛ちゃんの虐待死事件が記憶に新しいまま、なぜこんな事件が起こってしまったのか。あの愛くるしい瞳の少女たちの命を救うことができなかったのか。長谷川さんに問いました。

長谷川さんは、親族はもちろん、児童相談所でも、先生でも、近所の人でも、だれでも、「あの子がおかしい」と感じて真剣にかかわる人が1人でもいれば、必ず救われるんです、と答えました。真剣にその子を見続ける人がいれば、誰かにつながり、救われる道ができると。

ある地方で、不在がちな親のもと、兄弟間でひどい虐待があり、弟が大変な目に遭っているという情報を耳にしたある保健師さんは、昼休みの時間、毎日、その家の周りを「だれか出てきて、出てきて」と念じながらぐるぐる歩いたそうです。しばらくしたある日、兄がふらりと相談機関にやってきて、援助につながっていったといいます。そして保健師さん、民生委員さん、学校の先生、カウンセラー、親族など、協力できる人が連携して、何年もかけて援助し見守っていく体制に繋げることができたそうです。

では、専門家でもない私には、何ができるのか―。たとえば、毎朝見かけるあの子は、辛そうな顔をしていないか、違和感のある傷が急にできてないか、日が暮れても道端や公園で所在無くぶらぶらしていないか、ちゃんと清潔な服を着せてもらっているか、いつもお腹を空かせていないか―。毎日すれ違う一瞬の間でも、子どもの異変に気付いて、どこかに繋げて、それを見守り続ける「おせっかいおばちゃん」にはなれそうです。「誰か一人でも…」が、一人でも増えて、あの重苦しいニュースが、少しでもなくなることを願いたいと思います。

記者プロフィール
この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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