参院選の争点「新しい資本主義」を検証する

ニュース解説

今月8日発売の文藝春秋2月号に
岸田文雄首相が
『私が目指す「新しい資本主義」の
グランドデザイン』
という文章を緊急寄稿しました。

岸田首相の掲げる「新しい資本主義」が
具体的に何を目指しているのか?
分かりにくいという意見に応えた
内容になっています。

最後のまとめの中で
「今夏には」
「実行計画を
工程表を明示した上で策定」する
としており、
今年夏の参院選を意識した
スケジュールとなっています。

◆なぜ今、「新しい資本主義」なのか

岸田首相は市場の効率性を認めた上で
市場の負の側面に焦点を当てます。

主に新自由主義と呼ばれる
”市場万能主義”の弊害が目立ってきた
との認識で、弊害として
・富の集中と
・環境破壊を例に挙げます。

こうした問題意識自体は
目新しい視点ではありませんが、
今回の寄稿では
国家資本主義とでも呼べる経済態勢が
勢いを増してきたとし
(国名は上げていないが
中国を指している)
こうした「挑戦」に対し
資本主義をバージョンアップして
対応するしかないと、
この問題を明確に
国の安全保障の
延長線上に位置付けています。

◆「人」「官民連携」
「スタートアップ応援」など

施策は例えば、
「人」への投資を重視し
①能力開発支援
②再就職支援
③転職ステップアップ支援
の3つの分野で、約100万人に対し
3年間で4,000億円規模の施策パッケージを
創設するなどと具体的に示しています。

このように内容と予算規模が
「官民連携」「スタートアップ応援」
「地方デジタル田園都市国家」
「子育て世帯所得アップ」などの分野別に
示されています。

詳しい内容については
文藝春秋をお読みください。

◆新しい資本主義での
新しい「公取」の役割

実は寄稿には
私たち記者の将来に関わる内容も
ありました。

岸田首相は
新しい資本主義を目指す上で
「公正取引委員会などによる
競争政策の重点も変わってくる」
との考えを示しています。

どういうことでしょうか?

これまで公取は
合併の際の占有率(シェア)の規制に
重点を置いていたが
これからは
企業と下請け企業との取引関係で
適正なコスト転嫁が認められているか?
という関係性の規制の重要度が増す
としています。

その一つとして
デジタルプラットフォーム企業と
取引先の関係を挙げ
「(デジタルプラットフォーム企業が)
優越的な地位を利用して
不適切な関係を強要していないか」
という論点を投げかけます。

この”不適切な関係”はモノ(商品)を
デジタル市場で販売する場合にのみ
当てはまるわけではありません。

ソフトやサービス、
具体的には
私たち記者の生産する商品である
ニュースにも当てはまります。

デジタルプラットフォーム企業は
ニュースにかかるコストを
全く無視しています。

こうした現状は
ローカルジャーナリズムに
危機的な状況を強いています。

資本主義は
民主主義と共に歩んできましたが、
現在の状況は、
民主主義が
資本主義によって脅かされていると
いってもいい状況です。

<全体を通じて、そして今後>

アベノミクスのスタート時、
黒田バズーカ(日銀の超金融緩和)によって
『トリクルダウン』
つまり、お金が、まずお金持ちを潤し
その後、中低所得者層に滴り落ちてくる・・・
という理論が真顔で語られました。

あの理論は一体、何だったんでしょうか?

その理論に比べれば
岸田首相の主張は
雨がまず地面を潤し、
その気化熱が地表を温める・・・
という真逆の方向性で
そこには共感が持てます。

しかし、果たして
それが成長につながるのかどうか?

そもそも、
借金してまで成長が必要で、
必要だとしても
適正な成長とは
どうあるべきなのか?

資本主義の遺伝子に組み込まれた
成長という遺伝子のジレンマについて
難しい問題ですが
夏の参院選まで取材し、
継続的に記事にしたいと思います。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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