まだ間に合う!平等院で『初詣』

オピニオン室

「平等院鳳凰堂で初詣できれば
嬉しいなぁ~
京都まで行けないし・・・」と思い、
『平等院鳳凰堂と浄土院』開催中の
愛媛県美術館に行ってきました。

学芸員の五味俊晶さんに
「この美術展で
初詣スポットとか、あります?」。

恐る恐る聞くと、
割とあっさり、
「思い当たる場所がありますよ」と
紹介してくれました。

それが、ここ!

◆ご本尊と襖絵、美術館で実現したコラボ

まず仏像。

養林庵書院の本尊、阿弥陀如来坐像で
江戸時代初期の作品。

説明には「眼相は厳しめ」とありますが
私には優しい表情に見えました。

心が平和になります。

五味さんが、この場所を勧めてくれた理由に
背景の襖絵があります。

襖絵と仏像は実際には、
この位置関係にありません。

美術展だからこそ実現した
コラボレーションです。

その襖絵に近寄って、よく見ると・・・。

分かります?

「南無阿弥陀仏」と襖の下の部分に
垂れ下がるように、いっぱい書かれています。

何か意味があるのかな?

平等院に実際にある藤棚をイメージして
南無阿弥陀仏が”垂れ下がる”ように
描かれているんだそうです。

ちなみに、襖絵は2012年(平成24年)、
山口晃さんによる作品。

蒸気機関車が死者を乗せ、
京都の街を見下ろしながら
極楽浄土に誘う様子が描かれています。

現代的な浄土解釈と
江戸時代の仏像、
そして平安時代からの信仰が
この場所で一体となっている・・・

チョット、表現が大袈裟でしょうか?

◆平等院展の”今”的な意義
~美術展は消費活動

岸田政権が
「新しい資本主義」を
ビジョンとして掲げます。

「成長と分配」を
具体的な政策に落とし込み
実現を目指すといいます。

資本主義は成長を前提とした制度で
(つまり低成長は”悪”)
成長は消費と同義です。

五味さんによると
美術展そのものは
消費活動なんだそうです。

確かに移動させて、見せる行為は
サービスの提供ですし、
若干なりとも”傷む”ことは
避けられません。

面白い作品を紹介してもらいました。

これは平等院の壁画を模写したものですが
よ~く見ると・・・

なんと、落書きがいっぱいあります。

なかでも一番、目立つのが足利本八さん。
落書きにしては目立ち過ぎでしょ!
(まさか足利尊氏の親戚?)

五味さんは
「平等院は普通に誰でも入れる場所だった」
と説明します。

さらに京都は歴史的に戦乱の場だったため
「平等院は修理と保存の繰り返しの
歴史だった」(五味さん)。

◆守ることの大切さ

一方で守り続ける人がいました。

勧進状です。

説明などによると、
平等院の伽藍を再興するため
寄附(浄財)を求める書状のようです。

「平等院展では模写作品もあるし
2代目、3代目の作品もある。
実物も大切だが、消耗を考えると
そうした作品も必要で重要。
鑑賞を通して
受け継ぐことの大切さを感じて欲しい」
(五味さん)。

*******

平等院鳳凰堂は平安時代後期
1053年に建立され、受け継がれています。

翻って「資本主義」は生まれて
せいぜい200年・・・。

たった200年で
「成長」の原資とでもいうべき
▼生活の場であり、
資源供給の場でもある地球環境
▼消費の前提となる
商品価値を創り出す労働者
を「消費(消耗)」し尽くすのではないか・・・。

そんな危機を、自ら招いています。

もし、資本主義が人を幸せにするシステムで
守りたいと思うなら
傷んだり、欠けた部分を修復し
次世代に受け継ぐ努力が必要ではないか。

今年の『初詣』で、改めて感じました。

※『平等院鳳凰堂と浄土院』は
愛媛県美術館でこの週末、9日(日)まで
開催中。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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