「投票率の低さ」と「人権意識」

オピニオン室

取材先で、ある小学生の言葉に
投票率の低さは
人権意識と関係しているのでは?
という大きなテーマ、
そして、私がこれまで気付かなかった
新しい視点に気付かされました。

小学生の人権メッセージ
『いろんなものの見方』です。

※メッセージを清家アナが朗読しています。
【公式】南海放送NEWSーYouTube

(全文)
「友達と虫の絵をかいた。
同じ虫を一しょにながめたのに、
友達の絵と私の絵はちがっていた。
どうしてだろう?
そうだ、友達と私は、
向かい合わせで
虫をながめていたからだ。
私に見えていないところを
友達はえがいていたし、
友達に見えていないところを
私はえがいていたんだ。
同じ虫を見てえがいていたのに
ちがう絵になった。
だけど、友達も私も
まちがってはいない。
いろんなものの見方があることを
教えてくれた友達を、大切にしたい」

5日、東温市で
松山地方法務局が主催する
人権作文、メッセージの表彰式が
ありました。

小学生高学年を対象にした
メッセージ部門には
2万点を超える応募があり、
最優秀を受賞したのが
西条市立小松小学校4年、
栗田彩禾(あやか)さんのメッセージ
『いろんなものの見方』です。

栗田さんのメッセージを
実際に栗田さんの声で聞いていて、
その素直な内容に
どこか心が晴れ晴れとしました。

そして、あることに気づきました。

◆投票率の低さと人権意識

10月31日に投開票された
衆議院選挙の愛媛県小選挙区の
投票率は54.98%で
前回を4.24ポイント上回ったものの
有権者のほぼ半数しか
投票しない状況は
先進国では異常な低さです。
(世界的に見ても恥ずかしいほど低い)

選挙取材でよく聞いたのは
「どうせ政治は変わらない」
「社会は変わらない」
といった脱力感。

しかし、よく考えると
投票は、栗田さんのいう
「いろんなものの見方があることを
教えてくれた友達を、大切にしたい」

そういう思いを実践する場、
たくさんの友達との
一体感を感じる場ではないか?

そう感じました。

◆政治は「虫」?

確かに
「自分一人がいくら言っても
頑張っても
世の中は変わらない」
と思う時もあります。

しかし、
”私から見る政治は今、
こんな姿なんだよ”と「えがいて」
たくさんの友達に見せるのが
投票行動ではないか?
そう感じたのです。

そして結果が
みんなと「ちがう絵」になったとしても、
「いろんなものの見方があることを
教えてくれた友達」
共に生きていくのが
民主主義国家ではないでしょうか。

もちろん、
民主主義も完全な制度ではなく
間違いは犯します。

しかし根底には
栗田さんのいう
「同じ虫を見てえがいていたのに
ちがう絵になった。
だけど、友達も私も
まちがってはいない。
いろんなものの見方があることを
教えてくれた友達を、大切にしたい」
という
どこか晴れ晴れとした納得感があり、
現在の政治システムの中で
その納得感を最も享受できるのが
民主主義という制度ではないでしょうか?

その前提が投票です。

◆人権教育は投票啓発につながる

私たち政治記者も
選挙報道の大きなテーマの1つに
投票率アップを置き
様々な特集などを組みますが
なかなか効果が上がりません。

そういう悩みを持ちながら
栗田さんのメッセージを聞くと
「あっ!投票って
こういう意味もあるんだ」と
気付きました。

人権教育や啓発は時間がかかっても
「投票」啓発の”王道”ではないでしょうか。

私に『人権』を
いろんなものの見方」から
教えてくれた栗田さんに感謝します。

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記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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