伊方原発再稼働 信頼回復への道のりは

オピニオン室

連続トラブルや
社員の無断外出問題などで
運転再開が延期されていた
伊方原発3号機が今月2日、
およそ1年11か月ぶりに再稼働しました。

再稼働までの道のり

四国電力・伊方原子力発電所では
2019年12月26日、
3号機が定期検査に入りました。

しかし、その後
さまざまなトラブルや
安全管理意識の欠如が明らかになり、
県民の伊方原発への信頼は
大きく揺らぎ、
再稼働は延期されました。

2020年1月
①【連続トラブル】
・核分裂反応を抑える制御棒を
誤って引き抜く
・すべての電源が一時的に失われる

  引き抜かれた制御棒

2021年7月
②緊急事態に対応する宿直勤務の社員が
無断外出していたことが発覚

このほか、再稼働の条件として
義務付けられていた対テロ施設の完成が、
国の設置期限だった
2021年3月に間に合いませんでした。
(施設は2021年10月完成)

さらに2020年1月、広島高裁が
3号機の運転を認めないとする
仮処分の決定を下しました。
(仮処分の決定は2021年3月に
取り消された)

信頼回復への道のり

四国電力は、これまでに
①【連続トラブル】について

▼定期検査ごとに制御棒の状況を確認し
原因となったスラッジ=
堆積物(鉄の酸化物)を除去

▼電源喪失を起こした
故障部品を取り換え、
計画的に点検監視を強化する

などの再発防止策を発表していました。

これに加え、
②で失われた信頼を取り戻すため

▼社内教育で社員に対し
コンプライアンス意識を徹底する

▼GPS付スマートフォンで
宿直社員の所在を確認する

などの
再発防止策を中村知事に提出しました。

その後、四国電力は
専門家会議などの場で
再発防止策を
くり返し説明しました。

さらに10月、
中村知事自らが、伊方原発を訪れ
安全対策の現状を視察。

その後、伊方町や県議会などが
再発防止策は妥当と判断します。

そして11月19日。

中村知事は
伊方町や県議会などの判断を踏まえ、
原子力事業者としての
責任や使命を自覚することなどを条件に
再稼働を了承しました。

※※※※※

12月2日に再稼働

これを受け四国電力は
12月2日午後7時、原子炉を起動させ、
3号機は1年11か月ぶりに再稼働しました。

再稼働を前に
四国電力の長井啓介社長は
先月30日の定例記者会見で
次のように述べています。

「地域の皆さまに
多大なご心配をおかけしました。
皆さまからの信頼を裏切る結果となり
私自身、忸怩たる思いです。
これらの事案を重く受け止め、
実効性ある再発防止策を策定し、
着実に実施しています。
今後も地域の皆さまの
ご理解をいただきながら
伊方発電所を運営していきたい」

加えて
「伊方発電所3号機は
四国における安定供給の要となる基幹電源」
と位置付けました。

四国電力によると
原発が運転を停止している間、
原発に代わり
火力発電所などで
電力を供給していましたが、
燃料費の増加に伴い
月々、およそ40億円の赤字を
計上していたということです。

四国電力によりますと、
冬場は電力需要が高まり
直ちに火力発電所の稼働は
縮小しないということですが、
脱炭素社会を目指す
カーボンニュートラルの面でも
発電時に二酸化炭素を排出しない原発は
メリットがあるとしています。

なお、再稼働後の電気料金について
四国電力では
「これまで通り」としています。

※※※※※

再稼働に地元住民は…

1年11か月続いた運転停止期間。

2011年に福島で起きた
原発事故後、新たに設けられた
新規制基準への適合に必要な
安全対策工事や審査で停止した
およそ5年3か月に次いで
過去2番目に長いものとなりました。

伊方町の住民の反応です。

■民宿経営者
「待ちに待った再稼働となり、
我々町民は大変喜んでいる。
原発関係の宿泊者が滞在すれば
パートで働く人や理髪業を営む人など
さまざまな人が潤うし、
宿泊者がいないと
町内の経済は停滞すると思う」

「宿直社員の無断外出などの問題は
厳重に気を付けてほしい。
社員1人1人が自覚を持ってほしい。
原発周辺の住民の命を預かっているのだから
それを肝に命じて仕事をしてほしい」

何よりもまず、安全を最優先に

四国電力では、再稼働にあたり
「高松市の本社から
原発の運転に精通した社員を
派遣するなど
安全対策を強化している」
「再稼働によって
脱炭素社会に向けた取り組みが進む」
と説明しています。

全ての電源の一時的な喪失や
社員の無断外出などは
大事故はもちろん、
事故が起きた場合の備えという点でも
二重に信頼を失ったといえます。

そういう意味で
信頼回復への取り組みは
ハードルが高いと
認識する必要があります。

記者プロフィール
この記事を書いた人
中武正和

1975年11月松山市生まれ。南海放送南予支局(宇和島駐在)記者として一次産業を中心に様々な話題を取材。西日本豪雨は発生時から被災地で取材活動に従事。2021年4月から県庁担当記者。南予・東予から届く支局の話題を分かりやすく解説します。

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