わたしのみち~水口佳美~

オピニオン室

梅雨入り前というのに、澄んだ青空ときもちのいい風。今回は、きょうのお天気のような女性に注目します。

水口佳美(みなくちよしみ)さん。

ラジオ番組「ニュースな時間(月~金16:00)」、テレビ番組「Beans(土11:55)」の気象予報士として、生活者の目線で日々の生活に役立つ天気の解説をしています。

◆2人の子どものママ

気象予報士、ラジオ・テレビ番組のディレクター、リポーター、司会業をこなし、主婦、2人の小学生のママとして忙しい毎日です。

「おかあさん、きょうの天気は?」

雨入りまえのこの時期は、天気が不安定。天気図とにらめっこして予想しても、「おかあさんの予報より、ヤフー天気のほうが当たるんやけど!」と文句いわれるんです、と笑います。

◆結婚、出産、退職そして復帰へ向け

地元の大学を卒業後、放送局で契約アナウンサーとして就職。契約終了とともに結婚し、出産。しばらく主婦業に専念していましたが、いつかは大好きなアナウンサーの仕事を再開したいと思っていました。

ただ、ブランクもある中、自分のオリジナリティをもたないと、フリーアナとして仕事は来ないだろうと考え、現役時代に興味を持ったお天気の仕事を専門にしようと思い立ちました。子どもがちょうど5歳と3歳のときだといいます。

◆文系ながら独学で物理、数Ⅲも

通信教材を取り寄せ、子どもを寝かしつけたあと、独学で勉強を開始。

しかし、大学受験も文系、高校では物理や数Ⅱ数Ⅲも学んでいません。とはいえ、気象にとって物理・数学は不可欠な科目。ならば、数式を「理解する」ことは断念し、ひたすら「覚える」ことに専念したそうです。

◆なんと!2年で学科一般試験に合格、しかし・・・

ビギナーズラックなのか、なんと勉強開始2年目の初受験で学科一般試験に合格。このままいけるかも…と思いましたが、実はそこからが苦難の道でした。

気象予報士試験は、学科一般と学科専門、実技の3科目。学科に合格しないと、実技の採点すらしてもらえません。しかも学科合格の有効期限は1年です。

本気のスイッチが入ったのはここから。「子どもが昼寝をしている時間」「幼稚園へのお迎えまでの時間」など、主婦のスキマ時間を有効に使おうとしました。

しかし、昼寝をしたはずが、子どもは気ままに目覚めます。急に熱を出して幼稚園を休み、1日じゅう付き添いだったり。思うように時間が確保できず、次第に、子どもに対してイライラしている自分に気付きました。

◆2つの“スイッチ”を入れっぱなしにしない時間の使い方

私のやりたいことは、子どもたちとの時間を削ってまですることではないはず―。そのとき、どんなにスキマ時間があっても、日中は、家族と子供のためだけに時間を使おうと決心しました。

勉強時間は、子どもたちを寝かしつけた午後10時から午前2時までと、週末の数時間のみと決めました。“子育て”と“勉強”のスイッチを、入れっぱなしにしない時間の使い方に変えたことで、子育てにも全力投球できるし、「この時間しか勉強できない」と集中できたと言います。
睡眠時間は3~4時間。初めはしんどく大変でしたが、2、3年経つと習慣になり、どんどん勉強が楽しくなっていきました。

◆「学ぶ楽しさ」を実感

親や先生の言うとおり勉強するのが優等生だった学生時代には、苦痛で仕方なかった「勉強」。わからない気象用語、わからない数式、わからない理論も、勉強を重ねるうちに、それらが1つの真理に向けて収れんしてゆき、新しい知識として自分の一部になっていく高揚感。「学ぶ楽しさ」を、この時初めて知ったといいます。

参考書を読み込み、ノートに書き込んでいきます。ノートが自分にとって最高の参考書になっていきました。

◆自分にとって、学ぶこととは?

「子育てをしながら、ふと考えることがありました。大学受験も失敗、就職も思うようにはいかなかった。なにもかも中途半端で,自分に自信が持てていなかったんです。もしかすると、自分が何かをやったという、証(あかし)が欲しかったのかもしれません…。」

なんと合格したのは、実に7年後でした。そして、その合格は、水口さんに、もうひとつのプレゼントを与えてくれたといいます。

記者プロフィール
この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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