今治焼き鳥 “人生最後の一手”とは

オピニオン室

今治市のソウルフードと言えば…

串に刺さず、鉄板にコテで押し付けて

鶏肉を焼く「鉄板焼き鳥」。

 

今治国際ホテル近く、

住宅街にポツンと灯る赤ちょうちんが目印の

「まる屋」。

今治焼き鳥の人気店の一つです。

「まる屋」今治市旭町4丁目3-32

 

カウンターにテーブル席が2つという小さなお店は

コロナ以前は連日、お客でいっぱいの繁盛店でしたが…

もう私ら食べていけん、こんなかったら(こんな状況だったら)。

今は8割減、9割減。まるっきり赤字です。

まる屋・女将 徳永圭子さん(今年1月)

女手一つでこれまで店を切り盛りしてきた

パワフル女将の徳永圭子さんも悲痛な表情を浮かべます。

 

そんな女将が店の生き残りをかけ

この秋、新たな一手に出ました。

 

案内されたのは、店から車で15分の場所。

新設した加工場、その名も「まるやキッチン」です。

 

普段、お店の厨房に立つ次男の輝(ひかる)さん、

長女のみなみさんの手を借りて製造するのは

もちろん“今治焼き鳥”。

お客様のほうへ、こちらから焼き鳥を届けてみようと思って。

おうちで簡単に、まる屋の味が食べられます。

 

自宅で本場の“今治焼き鳥”を楽しんでもらおうと

ネット販売に乗り出したのです。

厳しい経営環境のなか

新たに加工場に設備投資して

新事業を展開できたのには

理由がありました。

 

コロナが長期化し、

当面の需要や売り上げの回復が見込めないなか

中小企業の新市場の開拓や、新規事業の立ち上げを

国が支援する「事業再構築補助金」です。

 

この補助金を活用し、誕生したのが

「まる屋のかわももセット」!

「まる屋のかわももセット」1380円(税込)~ まる屋公式HPで販売中

今治焼き鳥の魅力の一つが“パリパリ感”。

店と同じ“パリパリ感”を自宅でも味わってもらえるよう

鳥の皮の部位、焼き方など、試行錯誤を重ねたといいます。

湯煎したあと、フライパンで炒めると

本場・今治の味が楽しめます。

人生最後の自分の中で一生懸命できることと思って、

大きな仕事やと思って。

できたら今治の焼き鳥を全国の方、全世界の方に

召し上がっていただいて。

きっと今治行って食べたらもっと美味しいんじゃないって

思ってもらえると思うんですよね。

 

商売人が多く、“せっかち”で

待つのが嫌いな気質といわれる今治市民を

満足させるため、考案されたといわれる“今治焼き鳥”。

 

長引くコロナ禍で“今治焼き鳥”だけでなく

地元住民や観光客に愛されてきた

各地の“ご当地グルメ”が今、

大きな岐路に立たされています。

 

状況を打開すべく、新たな一歩を踏み出そうとする人、

コロナ時代に適応した

商品やサービスに変革させようと模索する人、

そんな人たちの“思い”が潰えることがあってはならない。

“パリパリ”と自宅で「かわ」を味わいながら、

強く感じました。

記者プロフィール
この記事を書いた人
松岡宏忠

奈良県大和高田市出身。2005年に入社し
2009年の「NEWS CH.4」番組開始とともに
フィールドキャスターに。
2013年からキャスターを務める。
2021年春からはデスク業務にもあたる。
好きな言葉は「毒蛇は急がない」。

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