ベストセラー「人新世の資本論」の著者で
大阪市立大学大学院准教授の斎藤幸平さんが
14日、愛媛政経懇話会で講演すると知り、
会いたい一心で”受講”しました。
資本論を素地にした主張を、これほど平易に、
”今”という現実に即して語れる人が、
他にいるでしょうか?
例えば今月、熱海市で起きた大規模な土石流。
もちろん、盛り土に問題があるのでは?
という追求も重要ですが、
それ以前に、
なぜ?これほど豪雨が増えたのか
という問題を無視して、
本質的な解決がありえるかと問いかけます。
そして、その若々しさ。
Tシャツに
夏らしい、七分丈のストライプシャツを
羽織り、足元にはスニーカー。
会場はスーツ姿のおじさんで埋まりましたが
(私はKYなのでポロシャツにジーンズ)
その会場に斎藤さんが現れた時、
まさに、”資本主義”の時代に
”ポスト”資本主義が登場した感じがしました。
斎藤さんは1987年、東京生まれの34歳。
本人の自己紹介では「経済思想家」。
私にとっての斎藤さんは
資本論を使って、
”地球の持続可能性”という視点から
現在の経済活動の限界を指摘し、
さらに、解決に向けた具体的行動を提案し、
自らも行動する「経済活動家」です。
(ちなみに国内移動には飛行機を使わない
ということで、大阪からはJRでやってきた)
私たちの世代(私は1965年生まれ)は
パブロフの犬のように、
「資本主義は共産主義に打ち勝った
人類を豊にする優れた経済システム」
という思考の枠組み(限界)を持ちます。
しかし斎藤さんに、
そんな限界はありません。
(ソ連邦が消滅したのは、斎藤さんが4歳の時、
つまり実体験としての資本主義の勝利はない)
この限界を持たない思考は
実に爽快で、
私がインタビューでまず、
「斎藤さんって、竹中平蔵さんとか
どう思うんですか?」と聞くと
「分かりやすい”悪”ですね」と答えたので
私がビビッて
「それって書いていいんですか?」と
聞くと、
「いいですよ」って素っ気なく返されました。
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講演の内容は7月15日付愛媛新聞の2面に
詳しく掲載されていますので
私は、個人的インタビューの内容を中心に
お伝えします。
◆新自由主義が”収奪”したのは
「都市の非正規雇用者」と「地方の農家」
私の質問①
「斎藤さんが
(実践しようと)主張しているような
生活や社会(例えば共有財産の重視など)は、
愛媛の農山漁村には、
まだ残っているように思うんですが・・・」
斎藤さん(要旨)
資本主義がもたらした
一部富裕層の富の独占が
よく、先進国VS途上国という構図で
語られるが、国内でみると、
割りをくっているのは、
若者と地方の人たち。
中でも特に収奪されているのは
都市の非正規雇用者と農家。
気候変動は農家にとっては
死活的に重要な問題だ。
そんな中、
「資本主義はこのままでいいのか?」
という問いかけがあって、いわゆる、
緑の資本主義やSDGsが生まれた。
じゃぁ、
そうした”良い資本主義”がいいのか
というと、それもダメ。
成長が絶対条件の資本主義から
脱するしかない。
◆中国は共産主義国家じゃない?
私の質問②
「資本主義ではない経済体制が現在、
残っているのは中国や北朝鮮ぐらい。
若い人たちが果たして
そういう社会を望むんでしょうか?」
斎藤さん(要旨)
そもそも学生ら若い世代は
中国を共産主義国家だとは思っていない。
マクドナルドだってユニクロだってある。
中国は国家主導の資本主義国家であり
日本のように
企業が主導する資本主義国家とは異なる
という違いがあるだけ。
(”脱”資本主義というと革命を連想し、
不幸をもたらすというイメージがあるが)
今の若者は非正規雇用に代表されるように
革命がなくても
すでに不幸で不平等な状況にある。
その状態の方が問題。
◆「”魔法の”蚊取り線香」なんて、ない
私はこれまで、
資本論で描かれた成長(剰余価値)を
”逆”蚊取り線香のイメージで
捉えていました。
資本を回転させるごとに
必ず剰余価値を産み(事実上の搾取)、
同じ地点に戻らず、外側に、
つまり、渦巻き状に外へ向かって
資本が自己肥大してゆくイメージです。
(蚊取り線香の終点に火をつけ、
火が外側に広がってゆくイメージ)
しかし、斎藤さんの話を聞き、
実は真逆で、
まさに蚊取り線香のように
どんどん内側に燃え進み、
最後は燃え尽きるのみ・・・
という状態になることに気づきました。
外側に無限に拡大する
”魔法の”蚊取り線香なんて
「ない」ということなのでしょう。
実は、この
『資本主義は”逆”蚊取り線香だ!理論』
は、私のオリジナル理論?なのですが、
もう一度、
斎藤さんにお会いする機会があれば
正しいかどうか?
是非、確認してみたいです。
斎藤さんは帰りもJR利用のため
せっかく愛媛は初めてなのに
とんぼ返りで
大阪に帰ってしまいました。
是非、次回はご家族連れで
ゆっくりと愛媛にお越しください。