ことしもまた…アコヤ貝3年連続で大量死

オピニオン室

真珠を育てる
アコヤ貝の生産がさかんな
宇和島市と愛南町の宇和海で、
ことしもアコヤ貝の大量死が
確認されました。

大量死の発生はこれで3年連続です。

毎年のことになるのか…」

地元では落胆の声が聞かれます。

50%死んだ地区も

県は今月15日、17日に
現地調査を行いました。

その結果、宇和島市と愛南町のうち、
三浦半島から由良半島かけての
宇和海の一部の地区で
この春ふ化した
アコヤ貝(稚貝)に被害が確認されました。

 【資料】死んだアコヤ貝・2020年夏

多い地区では、約50%のアコヤ貝が死亡。

被害が無かった地区でも、
一部のアコヤ貝で
貝がらの真珠層が変色したり、
外とう膜と呼ばれる身の一部が
小さくなったりする異常が
確認されています。

3年連続の大量死

宇和海で
アコヤ貝(稚貝)が
大量に死んだのは、
これで3年連続です。

  【資料】積み上げられたアコヤ貝・2019年夏

おととし、
2019年の夏に発生した
アコヤ貝の大量死では
被害額は約3億円にのぼりました。

その翌年にも
アコヤ貝の大量死は続き、
生き残ったアコヤ貝の数は
平年のおよそ半分にまで減少。

そしてことしも、
アコヤ貝の大量死が
確認されたのです。

原因はウイルス性感染症と推定

県と国の調査で、
これまでに
大量死の原因は
ウイルスによる
感染症と推定される
ことが分かっています。

ただ、どんなウイルスなのか
特定はされておらず、
ウイルス感染症だけが
原因なのかも分かっていません

さらに県では
「アコヤ貝の入ったカゴを洗うなど、
貝の負担になる作業は
控えてほしい」と
呼びかけてはいますが、
大量死への有効な対処法は
確立されておらず、
特効薬も開発されていません。

  対応にあたる愛媛県水産研究センター

真珠の世界では、
高水温下でも死ににくい貝、
つまり高水温に耐性のある貝が
「強い貝」だと言われています。

県は高水温でも死ににくく、
かつ、おととしから続く
大量死で生き残ったアコヤ貝から
質の高い貝を選抜して育てる研究
進めています。

落胆 あきらめ 生産現場は…

複数の関係者に取材すると、
ことしアコヤ貝の死亡が
宇和海で確認され始めたのは
今月上旬からだということが
分かりました。

宇和島市の
愛媛県漁協下灘支所管内と
愛南町の
愛南漁協内海支所管内で被害が多く、
ある関係者は
「原因がほぼ特定されてはいるが、
カゴ掃除を控えるくらいしか
対処法が無く、
どうしようもない」と肩を落とします。

アコヤ貝が減ると、
その分生産できる
真珠の数の減少につながり、
愛媛県漁協では
おととしの大量死の影響で
今年度の真珠生産量は
平年の半分程度にまで
減少すると試算しています。

引き続き真珠産業への支援を

愛媛の真珠をめぐっては、
新型コロナで
ことし春に開催が延期された
昨年度、2020年度分の
入札価格が
約34億8600万円と、
前の年度より約35%落ち込みました。

  【資料】真珠入札会・宇和島市

入札会に参加した商社は
コロナ禍でも
購買意欲は下がっていなかったと
いうことです。

それでも販売額が
落ち込んだ理由について
県漁協などは、
ウイルス感染症が原因とされる
真珠の品質低下を挙げています。

宇和海に潜むウイルス感染症へ
どう立ち向かうのか。

養殖業者の間から
低金利融資などの
経営支援に
期待する声が聞かれるなか、
これから夏場にかけて
水温が上昇する
宇和海での
アコヤ貝の生育状況を
注意深く見守る必要があります。

 

 

記者プロフィール
この記事を書いた人
中武正和

1975年11月松山市生まれ。南海放送南予支局(宇和島駐在)記者として一次産業を中心に様々な話題を取材。西日本豪雨は発生時から被災地で取材活動に従事。2021年4月から県庁担当記者。南予・東予から届く支局の話題を分かりやすく解説します。

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