生き残った色ガラス~資金調達の未来

オピニオン室

宇和島市津島町の
岩松川沿いに建つ
江戸時代の大商家、
小西本家の改修工事が
このほど終わりました。

「色ガラスの家」と呼ばれ、
江戸末期の接待館(ゲストハウス)の
色ガラス越しに
当時の人が楽しんだであろう
岩松川の風景をご覧下さい。

▼『生き残った色ガラス
~資金調達の未来』

岩松地区には江戸時代から
昭和初期にかけての
貴重な建物が残り
住民らが街並みの、国の
「重要伝統的建造物群保存地区」
選定を目指しています。

中心的建物が1866年建築の
「小西本家」です。

◆生き残った色ガラス
資金の出所は?

職人技の”粋”な細工の建具などは、
当時のまま残され
シンボルである色ガラスも
一部、ひびが入っていますが
そのまま保存されました。

保存を支えたのが
米国の財団から援助された
約2,000万円の資金です。

住民らは知恵と熱意で、
”ドル”資金を誘致しました。

IT時代に入り、地域住民の
活動資金の調達の選択肢も
グローバル化していると
感じました。

◆資金は民間の
非営利組織から

2018年の西日本豪雨以降、
傷みがひどくなった建物を
なんとか修繕、保存しようと
住民らはまず、

①歴史的建築物などの
保存に取り組んでいる
米国の非営利団体
「ワールド・モニュメント財団」
(WMF)にアプローチしました。

その結果、
『岩松歴史的町並み』が
「危機遺産」に選ばれます。

②「危機遺産」に
選ばれたことを受け、WMFと
同じく米国の
フリーマン財団から
約2,000万円の助成を
受けることが出来ました。

◆税金に頼らない
住民の自立した資金調達

みんなの財産を
住民自らが
自律的に守ろうとする場合、
公費(自治体の予算=税金)に
頼る方法があります。

今回、特徴的なのは
民間の非営利組織から
資金援助を受けている点です。

WMFはグローバル企業の
アメリカン・エキスプレスを
設立スポンサーとしており、
フリーマン財団は
同じくグローバル企業、
AIGの元副会長で
長く日本事業の責任者を務めた
故ホートン・フリーマンさんが
設立した財団です。

民間の善意が
岩松の財産を救ったともいえます。

◆コロナ後の世界で本格化?
資本主義の”修正”

コロナ禍で
世界の政府の財政支出は
極端に拡大しています。

コロナ後は、その反動として
緊縮財政(増税も)は十分、
予想されます。

資本主義社会は
勝ち負けがはっきりする世界。

そんな世界にあって
一部の民間企業に蓄積された”富”を
いかに”公”に、つまり、
公共分野に再分配するかは
歴史的危機を
乗り越えるためにも
重要な議論の一つになるのでは
ないでしょうか。

民間企業は
今回のケースのように
”公”に貢献する役割を担う
(貢献する能力のある)
社会的存在である一方、
コロナ禍の今、
資本主義の持つ副作用、
富の偏在と格差問題が
深刻化している
という事実もあります。

資本主義という
”色ガラス”越しに
見慣れた社会を
一度、色ガラス”なし”で
見直してみる
いい機会かもしれません。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(57) 1988年南海放送入社後、新居浜支局、県政担当記者を経て現在、執行役員報道局長・解説委員長。釣りとJAZZ、「資本論」(マルクス)や「21世紀の資本」(ピケティ)など資本主義研究が趣味。

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