現状維持は後退である byウォルト・ディズニー

オピニオン室

DAZNで
“ライバルウィーク”と銘打った
J3リーグ、
FC今治対カマタマーレ讃岐の
四国ダービーが昨日行われ
1-1の引き分けでした。

下位に沈む同士
(今治13位、
讃岐15位最下位←試合後14位)
とは思えないバチバチの90分で
四国ライバル決戦としても
見応えがありました。

戦前、讃岐の番記者さんから
「ところで何で
今年の今治は弱いの?」と
聞かれ、細かい要因を
いくつか上げました。

昨年はJ昇格初年度の勢いも
ありました。

2年目の今年、
去年と同じスタイルで、
ほぼ同じ主力でスタート。

しかし
相手に研究された今年は
ストロングポイントだった
守備力が通用しなくなり、
昨日まで公式戦5試合連続で
失点中。

昇格を狙うチームとしては
大変、不満足な順位です。

試合後、「現状維持は
後退なんですよね」と言った
あるスタッフの言葉が
身につまされます。

もちろん、
それを何とかしようと
昨日は目下売出し中の
バルデマールを
センターフォワードで
先発起用。

システムも変更するなど
初めて大きく
手を加えました。

ですが
既にシーズン四分の一が
終わった今、
スタートに失敗したと
言わざるを得ません。

今治は今、2年目の
ジンクスとも
戦っています。

今季J3に昇格したばかりの
テゲバジャーロ宮崎が
好位置(3位)に
つけていることからも
わかるように
“昇格初年度の勢い”は
確かに存在します。

ただそれが通用するのは
主にJ3リーグでの話。

J2やJ1となると
それだけでは
勝ち上がる事は出来ません。

*2011年、昇格直後に
J1優勝した柏レイソルや、
今年のタイリーグで
同じく昇格直後1部で優勝
(しかも無敗で!)した
BGパトゥム・ユナイテッド
のような例外もあり。

一方、低迷するチームが
指揮官交代で
一時的に勢いに乗る
「監督交代ブースト」
という言葉も
サッカー界には存在します。

昨日の相手、カマタマーレ讃岐が
そうでした。

今季最速のわずか2試合で
監督を交代し、
清水エスパルスを
天皇杯優勝させるなど
実績のあった
ゼムノビッチ監督を招聘。

ゼムノビッチ監督は直前まで
淡路島にある通信制高校の
サッカー部監督をしてましたが
チームの窮状を鑑み
急遽の要請を受諾。

讃岐の新監督になって
この日が
リーグ戦3試合目でした。

試合内容は讃岐が
終始押し気味。

決定機も今治より多く、
負ければ最下位の
可能性もあった今治は
なんとか引き分けに
もちこめたという試合で
“監督交代ブースト”効果を
まざまざと見た思いが
しました。

今、この監督交代の
第一波がJリーグを
襲っています。

愛媛FCをはじめ、
先日はガンバ大阪など
下位に沈むチームを中心に
これまで7チーム
(J1~3まで)が
指揮官交代に踏み切ってます。

“監督交代ブースト”というのは
確実にあるのですが
こちらも効果は期限があって
長くても数試合。

それ以降は
監督の手腕にかかっています。

その“監督交代ブースト”の
効果期限が切れた、
つまり本当の実力となっている
愛媛FCとFC今治の愛媛同士の
ガチンコ対決が
次の土曜日に控えています。

プロ、アマ、
そしてリーグの垣根を越えた
日本最古で最大のトーナメント
「第101回天皇杯
JFA 全日本サッカー選手権大会」。

その1回戦で両チームが
合いまみえます。
(5月22日土12時~ニンスタ)

トレーニングマッチでの
対戦はありますが
ガチの公式戦では初対決です。

同じ都道府県に
複数のプロクラブが
存在する地域は全国で10だけ。

その一つ、愛媛で開催される
正真正銘の“愛媛ダービー”が
はやくも実現します。

FC今治も愛媛FC(J2・19位)も
イマイチ乗りきれていない現状。

これを打破し、
V字回復に最も効果的なのは
昇格後の勢いでも、
監督交代ブーストでもありません。

“地元のライバルを倒す”ことです。

ただし。

その恩恵を受け取れるのは勝者のみ。

それがダービーの醍醐味であり
残酷な所です。

記者プロフィール
この記事を書いた人
江刺伯洋

江刺伯洋(えさし はくよう)1971年3月1日松山市生まれ。
入社以来アナウンサーとして主にスポーツやラジオを担当。特にサッカー実況は少年からJリーグまで全カテゴリーをこなしてきた。
著書に愛媛FCのJ昇格劇を描いた「オレンジ色の夜明け」、「群青の航海 FC今治、J昇格まで5年の軌跡」がある。【現担当番組】DAZNのJリーグ中継(FC今治、愛媛FC)、ラジオ生ワイド「江刺伯洋のモーニングディライト・フライデー」(毎金曜午前07:15~11:09)など。

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