前半終了を告げる
御厨(みくりや)主審の笛が吹かれると
応援席から地元チームを讃える
たくさんの拍手が送られました。
ニンスタでこれほど誇らしげな
拍手を聞いたのは久しぶりでした。
DAZN解説、石橋智之氏も
「今までの愛媛からすると
(前半)30分で2得点は夢の
ようですね~」と
手放しの褒めよう。
記者席後方ではクラブ上層部が
「ほらっ!違うでしょ!」と
上気した顔で通り過ぎていきます。
ここまでは最高でした…
J2最初の監督交代を断行した
シン・愛媛FCの初陣。
一番の注目は
火中の栗を笑顔で拾った
実好新監督の采配でした。
前半、愛媛FCが蘇生できたのは
間違いなく彼が採用した
新システムのお陰でした。
これまで愛媛の中盤は
2ボランチを置く
4-4-2システムでした。
新指揮官はアンカーを置く
4-3-3システムに変更。
たかがシステムと侮るなかれ。
この“アンカーを置く
4-3-3システム”は
昨今のサッカー界トレンドで
欧州で言うと
リバプールやマンチェスター・シティ、
国内では川崎フロンターレなど
強豪チームが採用する
システムの一つです。
ザックリいうと
中盤でボランチ2人が
やっていた仕事を
アンカー1人に任せて、
より攻撃に
手数をかけるシステムです。
この日の愛媛FCの中盤でいうと
⑬岩井 ⑧川村 ↑攻撃方向
⑯田中←アンカー
こんな感じ。
⑯田中選手は
メチャクチャハードな役割。
そのお陰で前の2人は
攻撃に専念できます。
で、このシステムが
ガチ当たりします(前半までは)。
1点目。
スローインから
⑧川村選手の高速ターンで
前を獲ったところで
ほぼ勝負はついていました。
もし⑧川村選手が
一列下である
ボランチで先発していたら
この得点はありませんでした。
(直後のミドルシュートもゴラッソ)
2点目は⑬岩井選手と⑧川村選手が
ショートパスのコンビネーションで
崩し切った
ビューティフルな得点でした。
いずれも偶然に獲れたゴールではなく
監督の意図した
新戦術が生みだした得点に
愛媛のV字回復を確信していました
(前半までは)。
しかし後半ラストワンプレーで
追いつかれてのドローフィニッシュ。
再起を賭けた、
クラブの命運が決まる一戦で
選手も監督もやれることを
やりきったはずなのに…
「江刺さん、
サッカーって90分なんですよ」
帰りの車中で言われた
後輩Mディレクターの声が
今も耳から離れません。
残り1秒で追いつかれた
砥部の悲劇。
奇しくもスコアは
あの時のドーハと同じ2-2。
今では誰もがあの悲劇のお陰で
日本が強くなったことを
知っています。
結果だけを見て
やっぱり駄目じゃないか
という雑音に
流されてはいけません。
改善点はありますが
決して悲観する様な内容ではないことに
今こそ自信を持つべきです。