ニュースのウラカタ#6「リライトのツボ」
前回(#5 「続・デスクのお仕事」)の続きです。
CH4で3月17日に放送したシリーズ企画「春の味覚・イチゴ園」を題材に
リライト(文面編集)のポイントを見ていきます。
このを企画の取材にあたった三宅記者は、
まだ報道の現場は半年ほどとキャリアが浅いのですが、キラリとセンスの光る逸材です。
今治市とその周辺エリアを中心に日々の取材活動にあたっています。
三宅記者は取材現場での評判がよく、原稿にも、実直さ・素直さがにじみ出ています。
今、取材力とテレビニュース向きの”原稿化”力がめきめきアップしている、
ニュースCH4のディベロッピング・スターです。
今回の原稿も、とても素直な書き方で、映像を伴わない活字媒体であれば、
デスクがリライトしたものより親切でわかりやすいかもしれません。
★おさらい「リライトのポイント」(#5 「続・デスクのお仕事」より)
客観性、事実関係、正しい日本語、おもしろさ…
「おもしろさ」は、
情報性、タイムリー性、構成、演出、画力(えぢから)、言葉力など
様々な要素の組み合わせでアップさせることができます。
それでは、記者の原稿とデスクがリライトした原稿を比べながら見ていきましょう。
まずは、リードです。
【記者の原稿】
今週はシリーズで、春を感じる旬の味覚のデザートをご紹介しています。
きょうは、大三島のいちご園で今シーズンから販売が始まった旬の「紅い雫」を使った商品です。
【リライト済み】
今週はシリーズで、県内の「春を感じる旬の味覚」を紹介しています。
きょうは、島のイチゴ園に登場した真っ赤な新しい味です。
<ポイント>
リードは、視聴者に「本編を見たい」と思ってもらうための種まきの場です。
①何に興味を持ってもらうか
②そのために何を書いて、何を隠すか
③誇大広告になっていないか
(#2 「諸刃の剣・リード」より)
記者の原稿は、リードとしては”言い過ぎ”だと感じました。
リードだけで、大三島のイチゴのデザートが登場することがわかってしまい、
イチゴのデザートに興味のない人はサヨナラしてしまいます。
視聴者を絞り込みすぎているのです。
そこでリライトでは、デザート、大三島、紅い雫というワードを隠しました。
代りに「島のイチゴ園」「真っ赤な新しい味」という
守備範囲の広い、かつ興味を引きそうなワードを加えました。
そのほか、
・「旬」を2回使っている
・「販売」「商品」というワードはリードとしては固い
・全体的に説明っぽい
・「今シーズンから販売が始まった」という誤った日本語
などを修正しました。
ただし、デスクのリライトが本当に正解かどうかはわかりません。
※ちなみに「から」は線、「始まる」は点なので、正しくは「今シーズン販売が始まった」
次に本編(VTR部分)に入ります。
記者の全原稿、リライト全原稿、放送した動画は、
前回#5「続・デスクのお仕事」に掲載していますので、
興味のある方は覗いてみてください。
今回は、ごく一部分だけ解説します。
【記者の原稿】
今治市の大三島にある井上苺園です。
赤く色づき完熟したいちごが旬を迎えておりいちご狩りのシーズン真っ只中です。
【リライト済み】
今治市大三島。多々羅大橋を臨む海沿いに広がる、井上苺園です。
今は、イチゴ狩りのシーズン真っ只中。
旬を迎えたイチゴが真っ赤に色づいています。
<ポイント>
説明っぽい表現、くどい表現、固い表現を修正し、
多々羅大橋というシンボルを加えて場所のイメージをしやすくしました。
【記者の原稿】
いちごを育てているのは、井上洋平さんと衣美さんです。
■インタ 井上洋平さん
「両親が始めて20年経つんですけど、高齢でたたむっていう話がでたので」
しまなみ海道が開通する年に、洋平さんの両親が始めたいちご園。
■インタ 井上洋平さん
「こんな小さい島の小さい農園に遠くから来ていただけるお客様がいる。
笑顔で帰ってくれるっていうのが、どうしても残したいなと」
【リライト済み】
イチゴ園の若旦那と若女将、井上洋平さんと衣美さんです。
両親が営む農園を引き継ぐため、2年前に、夫婦で徳島からUターンしてきました。
■インタ 井上洋平さん
「高齢で(イチゴ園を)たたむっていう話がでたので
こんな小さい島の小さい農園に遠くから来ていただけるお客様がいる。
笑顔で帰ってくれるっていうのが、どうしても残したいなと」
<ポイント>
ご夫婦であること、Uターンしてきたことなどの情報を加え、
敢えて20年を捨てました。強いと感じなかったので…
そして若旦那、若女将という、ちょっと気になるワードを使いました。
以下、ここまでにおさえたポイントを参考に比較してみてください。
【記者の原稿】
両親が育ててきたあまおとめのほかに、
去年、二人は、新たに3種類のいちごの生産を始めました。
さらに、今シーズンから、衣美さんの夢であった
洋平さんがつくるいちごを使った加工品の販売をトレーラーで始めました。
販売し始めた商品は…
■インタ 井上衣美さん
「紅い雫のサンドイッチをつくります。」
紅い雫は、愛媛県が開発したオリジナル品種です。
雫のようなきれいな形で果肉全体が色づきいちごの加工品に向いているということです。
【リライト済み】
若夫婦の就農をきっかけに、井上苺園では去年、
愛媛県のオリジナル品種「紅い雫」を初めて植え付けました。
年が明け、今、1回目の収穫期を迎えています。
■インタ 井上洋平さん
「いろんな人からアドバイスをもらって出来は良かったです」
自画自賛の紅い雫。
若夫婦は、果実だけでなく、加工品も売り出そうと、商品のアイディアを出し合いました。
そして誕生したのが…
■インタ 井上衣美さん
「紅い雫のサンドイッチをつくります」
いろいろ書きましたが、すべて私のリライトに対する考えですので、
ポイントが違うことは多々あると思います。
記者の原稿の方がいいじゃないか、というご意見もあろうかと思います。
最後に、絶対おさえておかないといけないリライトのポイントは、
私たちが作っているのはテレビ番組であるということ。
つまり映像ありきのリライトです。
文面では捨てた情報でも、映像とテロップ(スーパー/字幕)で補完できるのです。
楽しい仕事ですよ。
次回のニュースのウラカタは、#7「ニューススタジオの秘密」。
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