第87回「新型コロナ 6つのクラスターが同時発生」

オピニオン室

■押し寄せる「第3波」

愛媛県は、11月に入り、26日までに167人(累計283人)の新型コロナウイルスの感染確認を発表しました。
21日には、19人。
22日には、23人。
23日には、26人。と、3日連続で過去最多を更新。
20日から26日までの1週間においては、129人にのぼっています。
10月末までの愛媛県内での感染者数が116人だったため、このわずか1週間で、それまでの感染者数を上回ったことになります。
全国的な感染拡大のいわゆる「第3波」が愛媛県内にも確実に押し寄せています。
こうした感染急拡大を受け、愛媛県は、11月20日に県独自の3段階の新型コロナ警戒レベルを1段階目の「感染縮小期」から2段階目にあたる「感染警戒期」に引き上げました。

■6つのクラスター同時発生

愛媛県内では、11月26日現在で、次の6つのクラスターが同時発生しています。(全て松山市)
①「会員制 真野」
②「ラウンジ おおた」
③「雄新中学校」
④「聖カタリナ高校」
⑤「高齢者施設(名称非公表)」
⑥「ツクイ・サンフォレスト松山」

これまでも愛媛県内では、松山市内の医療機関などでクラスターが発生したことがありますが、6つのクラスターが同時に発生するのは、初めての事態です。

※①「会員制 真野」
このケースでは、26日までに従業員5人、利用者11人、関係者12人の計28人の感染が確認されています。
愛媛県では、この店舗を11月7日(土)~17日(火)の期間に利用した方については、濃厚接触者にあたるため、外出を控えるとともに居住地域の保健所まで連絡して欲しいと呼びかけています。

※②「ラウンジ おおた」
このケースでは、26日までに従業員6人、利用者8人、関係者9人の計23人の感染が確認されています。
愛媛県では、この店舗を11月16日(月)~18日(水)の期間に利用した方については、濃厚接触者にあたるため、外出を控えるとともに居住地域の保健所まで連絡して欲しいと呼びかけています。

※③「雄新中学校」
このケースでは、26日までに生徒14人、教職員2人、関係者3人の計19人が感染していて、学校は、11月20日(金)午後から休校しています。

※④「聖カタリナ学園高校」
このケースでは、25日までに生徒6人、関係者1人、(別事例の教職員1人、関係者1人)の計9人が感染していますが、県は、関係者の調査が終わり囲い込みが完了したとしています。
このため、学校は、28日(土)から学校活動を一部再開するとしています。
この雄新中や聖カタリナ学園高校など県内の学校では、毎朝の検温や手指消毒、マスクの着用など、感染症対策を徹底していましたが、感染が広がってしまいました。
それほどに新型コロナの感染力は強く、警戒が必要です。
このため、県内20市町の教育委員会が近隣の児童生徒が集まりやすい場所や通学路周辺を巡回し、放課後・休日の子どもの見守りやマスク着用の声掛けなどを実施することにしました。

※⑤「高齢者施設(施設名非公表)」
このケースでは、施設のショートステイ利用者11人、職員6人、関係者4人の計21人が感染確認されています。
ただ、この高齢者施設は、名称を公表していません。
これについて、中村知事は、「クラスター・二次感染の発生を踏まえて、このままの態勢で、全ての関係者に感染を防ぐための注意喚起ができるかどうか、施設の指導・監督権限を持つ松山市と協議して判断して欲しい」と施設と松山市に呼びかけています。
一方、松山市の野志市長は、「今回のショートステイの事例では、利用者や職員などの行動歴を調査できており、家族や関係者、併設する2事業所などにも連絡済みで感染者に接触した可能性のある方を把握できている。国の基本方針などを考慮し、関係者の同意がない状況で公表するのは難しい」との見解を示しています。

愛媛県では、この施設で職員の負担増加や人手不足が懸念されることから、県の応援職員支援体制「E-WELネット」を活用し、県内の介護施設から応援職員2人程度を感染施設のグループ施設へ派遣することにしました。

※⑥「ツクイ・サンフォレスト松山」
このケースでは、施設のデイサービスなどの利用者10人、職員1人の計11人の感染が確認されています。
感染が確認された利用者は、前述した⑤「高齢者施設(施設名非公表)」も利用していたということです。

■無症状は自宅療養も
愛媛県は、急激な感染拡大に伴い、中予圏域の医療機関の負担が高まっていることから25日から入院患者の一部を東予や南予に移すことにしました。
さらに、これまでは、感染確認後に入院させていた無症状者について、医師の判断のもと、自宅療養させることにしました。
この際にも保健所などがケアを続け、症状があれば速やかに入院できる態勢を整えます。
ただ、全国や県内でも家庭内感染の事例が増える中、自宅療養では、同居家族などの感染予防対策を十分に取ることができるのかどうかが課題となります。

■「Gotoトラベル」について

全国知事会で国の感染状況指標(4段階)が上から2番目に深刻な「ステージ3」相当と各都道府県が判断した場合は、対象地域から除外することなどを求める緊急提言を取りまとめています。

この指標について、愛媛県は、現状を「ステージ2」と位置づけています。

しかし、25日時点で、国の「ステージ3」の7つの指標のうち、“入院患者数”、“直近1週間の陽性率”、“直近1週間の先週との比較”の3との指標が「ステージ3」の基準に達している状況のため警戒が必要です。(7つの指標全てで基準に達した場合に「ステージ3」に移行)

■この1週間が正念場

複数のクラスターも発生する中、中村知事は、「この波、今懸命に波を超えられるかどうかというところに来ている。この波を超えるためには、“この1週間が正念場”。是非そのことを県民の皆さんご理解頂きたい」と、強く呼びかけました。
さらに、「県民の皆さんが感染回避行動をみんなのチーム力でやって頂けたら増加ペースを抑制することは可能で、2週間後の状況を変えることは絶対に不可能ではない。これ以上、感染を広げないために一人一人が注意深く感染回避行動を行って頂きたい」と訴えました。

愛媛にもこれまでにない感染の波が押し寄せています。
コロナに決して慣れることなく、油断することなく、感染予防対策に取り組むことが重要です。

※次回記事更新は、12月3日を予定しています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ。
1999年南海放送入社、2008年~報道部(記者として愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在はデスクとして活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースなどを分かりやすくお伝えます。

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