第69回「西日本豪雨を超える長雨 愛媛への影響」

オピニオン室

■政府が「特定非常災害」に指定

2020年7月14日。
政府は、九州や長野県、岐阜県など、広い範囲で甚大な被害を出した「令和2年7月豪雨」を「特定非常災害」に指定しました。
「特定非常災害」の指定は、東日本大震災や西日本豪雨などに続き7例目で、3年連続となります。
これにより、被災者の運転免許証や営業許可証の延長など行政手続きに特例措置が適用されます。
対象地域については、特例措置ごとに各省庁が決めますが、これまでの例では、災害救助法の適用地域を対象とするケースが多くなっています。
(14日時点で災害救助法が適用されているのは、熊本、鹿児島、大分、福岡、岐阜、長野の6県61市町村)

■愛媛県内でも大きな被害
前線が停滞した今年の梅雨の長雨は、西日本豪雨の11日間を上回りました。
これに伴う「令和2年7月豪雨」では、九州4県や広島、長野、静岡、そして、愛媛県で、合わせて74人の尊い命が失われています。(7月14日時点)

このうち、愛媛県内の主な被害です。(愛媛県災害警戒本部まとめなど 7月14日時点)

【人的被害】
西条市周布では、7日夕方、大雨で増水した水路に転落して流された79歳の男性が見つかり、その後、死亡が確認されました。

9日、伊方町大江地区の水路では、80歳の女性が心肺停止状態で発見されました。
水路に転落し、下流に流されたものと見られています。

【孤立地区】
7日、土砂崩れの影響で、伊予市唐川地区の長崎谷集落(11世帯、22人)が孤立状態となりました。

この集落の住民は、50代から80代で、高齢者が多いため、集落と外部を結ぶ「命綱」とも言える道が寸断されたことで、日常生活への影響が懸念されていました。

しかし、懸命な復旧工事の甲斐あり、4日後に“う回路”が完成し、孤立状態が解消されました。

【土砂災害】
14日までに県内30か所で土砂崩れが発生しています。
(松山市16か所、今治市7か所、大洲市2か所、宇和島市1か所、西条市1か所、上島町1か所、久万高原町1か所、内子町1か所)

このうち、松山市では、2年前の西日本豪雨で土砂災害が発生し、再発防止のための砂防ダムを建設していた砂防ダムに通じる工事用の道路がある斜面が崩れました。

【住宅被害】
全壊や半壊、床上・床下浸水など被害にあった住宅は、県内で66棟。
(松山市57棟、今治市3棟、大洲市2棟、松前町4棟)
松山市が被害の中心で、特に中島町で多くの被害が出ました。

■今年の梅雨は記録的な雨に

7月5日の降り始めから7月14日までの積算雨量です。
西予市宇和で、551.0ミリ。
伊予市中山で、464.0ミリ。
松山と内子町獅子越峠で、442.5ミリ。
東温市上林で、414.5ミリ。
大洲市長浜で、406.5ミリ。
松山市南吉田で、403.5ミリなどとなっていて、
愛媛県内の多くの観測地点で、7月1か月分の平年値を上回り、2倍に達しているところもあります。
このため、雨が小康状態となっていてもこれまでの大雨で地盤が緩んでいるため、少しの雨でも土砂災害が発生する恐れがあるとして、気象台が注意・警戒を呼び掛けています。

■自分の命は自分で守る
「令和2年7月豪雨」では、愛媛県内各地に警報や土砂災害警戒情報が発令され、各地自体が5段階の警戒レベルのうち、レベル4にあたる「避難指示」や「避難勧告」を出しました。

このうち、松山市でも7月8日午前1時半と午前2時に市内36地区を対象に「避難指示」が出ました。
松山市では、愛媛県や気象台の発表する気象情報などを基に市が作成した避難判断マニュアルに沿って避難情報を出します。
市は、5日から降り続く雨を警戒し、気象情報をもとに6日午後10時半には、警戒レベル3にあたる「避難準備・高齢者等避難開始」を出し、自主避難所を開設するなどして住民に避難を呼びかけていました。
その後、雨が降り続き、7日深夜に「避難指示」を出すことになりました。
この「避難指示」の対象は、およそ17万人でしたが、松山市によりますと、実際に避難した住民は93世帯、203人だったということです。
やはり、深夜の避難は難しく、リスクを伴うため、改めて、住民一人一人が「自分の命は自分で守る」という意識を持って、避難情報や気象情報などを基に早め早めの避難行動を取ることが重要だと認識させられました。

梅雨は、まだ、あける気配はなく、この週末も雨が予想されています。
今回の豪雨によって、改めて、自然災害の怖さと備えの大切さを実感しました。

※次回記事更新は、7月23日(木)を予定しています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ。
1999年南海放送入社、2008年~報道部(記者として愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在はデスクとして活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースなどを分かりやすくお伝えます。

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