Yahooの反響にビックリ!書き込み2千件超

ニュース解説

きのう(22日)、コロナ危機の影響で、出荷できずに生け簀に滞留している養殖マダイ問題についてYahoo!ニュース連携企画記事として発信しました。

「数十億円マダイ在庫 どうする」

https://news.yahoo.co.jp/articles/ae805e750768841e0759b287d78e43d88637d0cb

予想以上の反響で、書き込みは2,200件超、書いた本人もビックリしています。ローカルニュースでも全国向けのネットニュースとして十分、通用するんだと”妙な”納得感があります。

経緯も含めて、取材の「ウラ話」的な部分を解説します。

◆「この話はデカい。ついでじゃ無理、また来ます」から取材スタート

愛南町の養殖マダイがコロナ危機の影響で出荷できず、生け簀に大量に滞っているという事実を知ったのは5月半ば。

まったく別の取材で愛南町を訪れた時でした。

”本命の取材”を終えて、ひょんなことから話を聞き始めたのですが、①コロナ危機の影響という”今”を象徴するニュースである点、②全国の養殖マダイの5尾に1尾が愛南町産であるという”全国的な”ニュースである点(そこまで出荷が多いとは知らなかった)、③町の年間予算が133億円、養殖マダイの年間出荷額は100億円、地場産業に与える影響が大きい、の3点から、とても「ついでの取材じゃ無理」と感じ、その1週間後、改めて愛南町を訪れ、本格的な取材をスタートさせました。

取材には合わせて8日、愛南町に車で通いました。(愛南町は松山市から片道2時間半はかかる)

◆Yahoo!ニュースというメディアを選んだ理由

取材の初期段階から、深く掘り下げた内容を報道するにはテレビ報道は難しいという印象を持ちました。

養殖業者の取材が困難を極めたからです。

養殖マダイの生け簀の在庫量・金額は、今後の市場価格に影響を与える”企業秘密”ということもあって、映像付きインタビューには応じてもらえませんでした。

①インタビュー撮影が難しい、②撮影出来たとしても、他の映像も単調になる可能性が高い、③大量の取材内容を盛り込まないと”真実”が伝わりにくい (6~7分のニュース特集では収まりきらない) などの理由から解説記事『ニュースの深層』と、『Yahoo!ニュース連携企画記事』での発信を選びました。

もちろん、テレビ番組なら上記3つの要件をクリアできる可能性はありますが、手続きや時間がかかり、ニュースの鮮度が落ちます。

愛南町にも、早くこの事実を全国に知ってもらいたいと希望する情報提供者がいて、その希望に応えるためにもスピーディーに、かつ、じっくりと内容を深めて伝える必要がありました。そのためには字数に制限のない解説記事や、Yahoo!ニュースとの連携企画記事がふさわしいと考えました。

実はYahoo!ニュース側からも記事を「早く出したい」との意向を受けていました。ニュースにとって”鮮度は命”なのです。

◆記事の品質を決定づけた全国一の活魚運搬車会社、中村社長との再会

5月下旬には初稿をYahoo!ニュースに送り、内容について協議しましたが、「人物に迫るなど、読ませる努力が欲しい」という主旨の要望がありました。

私も全国の人に興味を持って、楽に読んでもらう、何らかの”仕掛け”が必要と考えていて、すでに取材する人物を想定していました。

中浩運輸の中村浩之社長(53・写真上)です。

中村社長とは10年以上前に一度、取材で面識があり、養殖業者の取材が難しいなら、活魚運搬という視点から養殖マダイの出荷量の変化や、コロナ危機の”特異性”に迫れるのではないかと考えたからです。

ところが取材当日、約束の時間に本社(写真上)で待っていたのですが、いつまでたっても中村社長が現れません。

「おかしいな」と思って問い合わせると、なんと会社は大きく成長し、本社は別の場所に変わっていました。

しかも見違えるほど立派!(写真上)

夫婦2人で1台の活魚運搬車から始めた会社は、全国一の活魚運搬会社に成長していたことを知り、さらにビックリ!

よく考えてみると、日本一の養殖マダイの生産地(宇和島市と愛南町を合わせると、全国に流通する2尾に1尾は、このエリアから出荷される)なんですから、地元の運送業も日本一になって何の不思議もないわけです。

中村社長には合わせて2回、直接会って話を聞きましたが、一回目は1時間の予定だったのが2時間も、詳しく地元の養殖事情や、コロナ危機がもたらした「ありえない世界」を聞きました。

◆取材協力者との信頼関係と、「国民の知る権利」「報道の自由」(ちょっと、堅苦しいですが・・・)

最終的に原稿が出来上がった時点で、私の場合は取材協力者と、どこまで書いていいかを確認する場合があります。(記者みんながするわけではないし、私も場合に応じて)

取材協力者の信頼に応えることは大切ですが、何より「国民の知る権利」に応えなければなりません。

分かりやすく説明すると、取材協力者との信頼関係に応えるためには「書かないでおこう」と配慮することもありますが、「国民の知る権利」に応えるためには「事実を知ってしまった以上、書かんといかんやろ」となることもある・・・ということです。(ちなみに、まったく書かない記者もいる)

また「報道の自由」は尊重されるべきですが、読者の自由な興味・関心に極端に応える書き方をすると、結果として、真実から遠ざかる恐れもあります。

この辺りが、記者の資質が問われる部分ですね。

今回の取材の場合は、数人と確認作業を行いましたが(もちろん、原稿を見せるわけではない)、激しい言い合いになった人もいました。しかし、その人とも信頼関係は現在も築けていると思います。

記者が記事全体を通して、何を訴えようとしているかを理解してもらうことが大切です。

◆報道の次のステップへの挑戦

今回の記事を読んでくれた県内の大学生グループから、養殖マダイを販売することに協力してみたいという趣旨の申し出を受けています。

若者が地元の問題に関心を持って、その解決に取り組もうとする姿勢に触発され、今後は「解決」へ向けての取り組みにも参加してみたいな・・・と思っています。

愛南町の養殖マダイとの関りは、まだ続きます。

記者プロフィール
この記事を書いた人
三谷隆司

今治市出身(54歳)立教大学卒。1988年南海放送入社後、新居浜支局記者、県政担当記者などを経て、報道部長。現在、執行役員報道局長・解説委員長

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