病気の子どもを支える~ラ・ファミリエの取り組み

オピニオン室

「本人がSOSを出せる先をたくさん持っていることが大切だと思うんです」―。

慢性疾患や難病のある子どもや家族をサポートする松山市のNPO法人ラ・ファミリエでは、子どもたちが復学するためのさまざまな支援や相談にあたっています。

病院での闘病をひとまず終えて、ようやく社会(学校)の中でみんなと生活できる、となったとき、子どもや家族は、どんな困難や悩みにぶつかるのか、西朋子理事に聞きました。

いちばん多い相談は、親の就労の問題だと語ります。
「親御さんは、病気の子どもには添ってあげたいけれども、経済的な不安がでてくる。どんな手立てがあるか、行政のサポートが受けられるかなどを一緒に考えると同時に、必ず気に留めるのは兄弟の問題。(後回しになりがちな)その子のサポートを丁寧に行っています」。

子ども自身が抱える問題として、疾患によって顔貌などが変わる場合があり、復学時に不安を抱えることが多いといいます。
「そんな時は、一緒に学校に行かせてもらい、本人がこんなことで悩んでいるということを、先生に知ってもらって疾患の理解をしていただく。保健の先生も含めて話をさせてもらうと、寄り添ってくれる人がたくさん増えていくんです」。

中学生になると、悩みの中心は進学問題。高校の受験はできるのか、受け入れてもらえるのか、内申書の問題、でも勉強が遅れている、どうすればいいのか悩む人が多いと指摘します。また教科によって教室を移動することも多くなりますが、中学校はエレベーターはほとんど設置されておらず、上階への移動が困難な子どもがでてきます。授業も教科担任制になるので、その子の疾患を共有できていないためのトラブルもでてきます。
友人関係では、クラスのグループができているので、長期入院後に、その中に入れるのかどうか…。健常者の視点では気づきにくい悩みがさまざまに潜在しています。

「高校になると出席日数の問題がでてくる。高校は院内学級がないから、勉強は自分でプリントなどをすることしかない。学習支援ボランティアでサポートはしても、出席日数についてはどうにもしてあげられない。残念なことを告げなければならないときもあるが、夢を語れるようになってほしいので、気持ちに寄り添うことを大切にしている」と語ります。

ひとりぼっちじゃない、誰かが自分のことをおもってくれていると思えることが大事だと思う、おせっかいかもしれないけど、と笑う西さん。

「本人がSOSを出せる先をたくさん持っていることが大切だと思うんです。私たちができることは、困ったとき、ここに行ったらいいよという場所をたくさん作ってあげること」―。

当事者がどんなことで困っているのか、これまで気づかなかったことを知ることも、小さな「支援」につながるかもしれません。

NPO法人ラ・ファミリエが取り組む「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業」について、「ニュースな時間」のなかでシリーズでお送りしています。きょうは、当事者からの相談について、午後6時30分頃から放送します。

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この記事を書いた人
永野彰子

入社32年目、下り坂をゆっくり楽しんで歩いています。
ラジオ「ニュースな時間」で出会った人たちの、こころに残ることばを中心にお伝えできればと思います。

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