パラ競泳に彗星現る!東京パラ内定第1号山口尚秀。

オピニオン室

       

今年9月イギリスで開かれたパラ競泳の世界選手権。彗星のごとく現れ東京パラリンピックの内定を勝ち取った愛媛県人がいる。今治市出身の山口尚秀(なおひで)選手(19)だ。種目は男子100m平泳ぎ・知的障害のクラス。彼は初めての世界選手権で力を出し切り1分4秒95の世界新記録を樹立し、パラ競泳の内定者第1号となった。競技終了後に魅せた「おじぎ」が注目を集め話題になった選手だ。

■山口選手

「感謝の気持ちがあったし、海外ではお辞儀をするっていうことはあまりないので日本の文化を世界の人達に見せたかった」

山口選手がパラ競泳をはじめるきっかけになったのは2016年のいわて国体・いわて大会。幼いころからスイミングスクールには通っていたが大きな大会に出場したのはこれが初。そこで金メダルを獲得した。1位を取ったことよりもトップクラスの選手たちと泳いだことで、水泳への思いや自分の障害への思いが変わり競技を本格的に始めるようになったという。

■山口選手

「パラ水泳の選手たちが頑張って目標に臨んでいっている姿に自分も驚いた。障害があっても、スポーツの世界で活躍する場があるということと、障害があるからこそ、そこでしか体験できない世界があることも分かった」

2000年10月28日。今治で生まれた山口選手は3歳の時、知的障害を伴う自閉症と診断された。祖父母とともに歩行浴に通って水に親しみ、小4からスイミングスクールへ。当初は週1日の障害児コースに通っていた。

■山口選手

「最初は潜ったり、手で水鉄砲作ったりするぐらいなので、本格的に水泳をやったわけではなかったけど、幼いころから水と触れ合っていたので今の自分が存在すると思う」

2016年のいわて国体・いわて大会で金メダルを獲得後競技に目覚め、本格的に初めてわずか3年目で世界記録を樹立した。彼の強さの特徴は身長187㎝の恵まれた体格と大きな手足、そして関節のやわらかさにある。さらにもう1つ。大一番で力を発揮できる「集中力」が持ち味だ。この集中力を養うために役だっているのが小学校2年から習っている「ピアノ」の練習だと自己分析している。楽曲のレパートリーは多くベートーベンの「月光」を弾きこなす腕前もあるそうだ。

■山口選手

「ピアノは自律神経を整えることができるし、とにかくリラックス効果があるので競技に役だっています」

身体の大きさを活かしたダイナミックな泳ぎと、ピアノで培った「集中力」。この2つの柱で今回内定を勝ち取った100m平泳ぎの他に、50m平泳ぎ、50m背泳ぎでも日本記録を持っている。実は「背泳ぎ」での東京パラ出場も狙っているのだ。

そんな山口選手には熱烈な応援団がいる。彼の治療を手掛ける今治市のたかみつ治療院・橋田貴光院長だ。山口選手が東京パラの内定を獲得した翌日から院内の飾り付けががらっと変わった。

■橋田院長

「優勝した次の日くらいから飾りつけの制作に入って、帰ってくるのを待ちに待っていた。もう感激というか鳥肌が立ちました」

地元の歓迎声援を胸に山口選手は2つの種目で金メダルを目指す。

■山口選手

「東京2020はやっぱり見てくれる人も多いと思うので、こういう舞台で金メダルを取りたい。そしてパラスポーツの素晴らしさを知ってもらいたい」

記者プロフィール
この記事を書いた人
藤田勇次郎

1975年生まれ。奈良県大和郡山市出身。1998年入社。
高校野球・サッカー・日米大学野球・マラソン・トライアスロン・アームレスリング・駅伝・ボウリング・剣道・ビーチバレーなど各種実況担当。
「松山大学女子駅伝部」を10年にわたって取材。4本のドキュメンタリーを制作。

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