第33回「愛媛の“ひもの”が宇宙へ!?」

ニュース解説

■骨まで丸ごと食べられる干物(ひもの)

東温市の水産加工会社「キシモト」は、子どもからお年寄りまで幅広い世代が安心して食べられる加工食品を開発しました。
その加工食品が、頭や尻尾、骨まで全て“まるごと”食べられる魚(とと)の干物「まるとっと」です。

この商品もニュースの深層「第29回」で紹介した「クラフトジン『パチパチ』」と同じく「えひめ農商工連携ファンド」から誕生した商品です。

 ■ファンドナンバー1のヒット商品
「まるとっと」は、2011年の商品化以来、今年8月までに累計およそ2億4000万円を売り上げています。
「えひめ農商工連携ファンド」を活用して、様々な企業や団体などが約10年間で約300の商品を生み出してきましたが、その中でもナンバー1のヒット商品となっています。

■開発は苦労の連続
「まるとっと」を開発した岸本賢治専務は、元々、東京でサラリーマンをしていましたが、30歳を過ぎたころに東温市に帰郷したそうです。
松山圏域で最後発の干物屋だったことや牛肉の輸入自由化に伴う価格低下、消費者の魚離れのなどの影響で、厳しい経営を迫られました。こうした逆風の中ではありましたが、岸本専務は愛媛県のバックアップを受けながら新商品の開発をスタートさせました。
当初は、魚の骨を取り除く方法を考えましたが、なかなか思ったような成果がでません。そこで、逆転の発想で、骨を取り除かず、そのまま食べられる干物の商品開発を目指したのです。

骨を柔らかくするには高温、高圧での加工が必要ですが、魚の種類によって適した温度や圧力が異なるため、岸本専務は、何度も何度も実験を繰り返し、ひたすら干物を試食し続けたそうです。

さらに、魚を均等に乾燥させるため、魚体を左右対称に真っ二つに開く「センターカット」の機械も独自開発しました。その結果、骨までまるごと食べられる干物「まるとっと」が完成しました。
現在は、アジ、サンマ、ホッケ、タイ、サケなどの魚を塩やみりん、バジルで味付けするなどして、約20種類を商品として販売しています。

■本当に骨まで食べられた

さて、私も実際に「まるとっと」のアジを試食させて頂きました。
本当に頭や骨まで食べられるのか?半信半疑で干物を口に運ぶと…。
なんと!!骨がまるで魚の身の一部のように柔らかく、違和感も全くありません。
それどころか骨や頭の中にある旨みが干物の味わいを引き立てています。
率直においしい!と感じました。

■地球人と宇宙人が一緒に干物を食べる日が来る?

現在、キシモトでは、「まるとっと」の特長を活かした、ある壮大なプロジェクトに挑戦しています。それが、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙食への採用です。
「まるとっと」の特長として、まずは、頭や骨まで食べられるため生ゴミが発生しません。
さらに宇宙空間で不足しがちなカルシウムが通常の干物と比べ30~40倍ほど多く含まれています。
岸本専務によりますと、現在、JAXAが「まるとっと」を宇宙食として採用するかどうかの最終審査を行っていて、早ければ年内にも結果が出るのではないということです。

※写真 左:岸本善光社長、右:岸本賢治専務
最後に岸本専務は、「宇宙人がもし、いるなら地球人と一緒に「まるとっと」を食べてわいわい楽しんでくれるのが私の夢」と、語ってくれました。

 愛媛の干物が地球を飛び出し、宇宙に羽ばたく。
そんな日が訪れることを楽しみにしています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ(現在43歳)、 1999年南海放送入社、2008年~報道部(記者として愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任。
現在はデスクとして活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースなどを分かりやすくお伝えます。
 

御手洗充雄をフォローする
ニュース解説
ニュースの深層 南海放送解説室