第32回「ワンチーム ラグビーが持つチカラ」

オピニオン室

■ベスト8進出を後押ししたい
 
10月13日(日)、日本ラグビー史上初のワールドカップベスト8進出をかけた予選リーグ最終戦スコットランド戦が行われました。
愛媛県松山市本町の南海放送には、ラグビー日本代表のレプリカジャージなどを身にまとった200人を超えるラグビーファンが詰めかけました。その目的は、「日本vsスコットランド」のパブリックビューイング。
日本代表チームの予選リーグ突破を後押ししようと南海放送が主催しました。

■予選敗退の可能性も
日本代表は、予選リーグで、戦前の期待を上回る快進撃を続け、ワールドカップ開始時点では世界ランク1位だったアイルランドを撃破するなど3戦全勝で、予選リーグ(プールA)の首位に立っていました。
しかし、最終戦となるスコットランド戦では、敗れた場合に予選敗退の可能性も残されていました。また、スコットランドは、前回4年前のワールドカップで日本代表が唯一敗れ、ベスト8進出の夢を打ち砕かれた因縁の相手とあって、世紀の大一番は日本中が注目する戦いとなりました。

■世紀の一戦キックオフ
試合開始とともに南海放送のパブリックビューイングに詰めかけたラグビーファンのボルテージも上がっていきます。お手製の応援旗などを手に必死の声援が日本代表に送られます。
しかし、開始早々の前半6分、世界ランク9位で過去の対戦成績でも日本代表に10勝1敗と大きく勝ち越している強豪スコットランドがその力と意地を見せつけ、先制トライを奪います。

会場には、落胆の声が上がりますが、すぐに気持ちを切り替えて声援を送ります。
その声援が選手に届いたのか、日本代表は、前半17分、25分と相次いでトライを奪いスコットランドを逆転すると会場のボルテージは最高潮に達します。

さらに前半終了間際にも日本が追加のトライを奪い、前半戦を21-7でリードして折り返します。

■ラグビー人気を根付かせたい

※荻山和林記者
南海放送報道部には、国体のラグビー成年男子愛媛代表でキャプテンを務め、チームを岩手国体優勝、愛媛国体準優勝に導いた荻山和林記者がいます。ハーフタイムを迎え、パブリックビューイング会場では、この荻山記者によるゲーム解説や子どもたちのラグビー体験会も行われました。

荻山記者は、このラグビーワールドカップ日本大会の盛り上がりを「本当にうれしい」と素直に喜んでいました。国内にラグビーのプロリーグがなく、他のプロスポーツと比べ人気が劣るためです。
また、会場には、オーストラリア代表チームの愛媛キャンプ誘致を目指していた「愛媛県ラグビーフットボール協会」や「愛媛県」の職員の姿もありました。県職員らは、ボランティアで応援グッズを配ったり、ファンの誘導などを行いました。
ともに目指す目的は、ワールドカップの盛り上がりを活かした県内のラグビー競技人口の拡大や認知度アップで、この人気をいかに根付かせていけるのかがこれからの課題です。

■歓喜の瞬間
ハーフタイムはあっという間に終わり、勝負の後半戦が始まりました。
開始早々、日本代表がトライを奪い21点差をつけたのも束の間、スコットランドの怒涛の反撃が始まります。わずか数分間であっという間に2トライをあげ、1トライ7点差まで詰め寄られます。
残り時間は20分以上。引き分け以上でベスト8に進出できるとはいえ、防戦一方の試合展開に1分1秒がこれまで以上に長く感じます。相手の攻撃を耐えて、耐えて、耐え忍ぶその日本代表の懸命な姿に会場のファンは心を打たれ、自然とニッポンコールが起こります。

そして・・・歓喜の瞬間が訪れました。

日本代表は、28-21でスコットランド代表を破り、予選リーグ4戦全勝で、悲願の史上初のベスト8進出を決めました。

■「ラグビーで元気を取り戻してもらいたい」
歓喜の一方で、この一戦は、超大型の台風19号の影響で開催が危ぶまれました。
関係者による懸命な対応で試合は行われたものの、台風19号は、東日本を中心に広範囲で猛威をふるい、多くの犠牲者や甚大な被害をもたらしました。
試合後、勝ち越しの代表初トライを決めた稲垣啓太選手は、「台風で被災した方々に、ラグビーで元気を取り戻してもらいたい」と、この試合に懸けた思いを語ると、会場からは大きな拍手が送られました。
ラグビーは、チームメイトのために自分を犠牲にし、傷だらけになって一つのボールを繋いでいくスポーツです。
台風19号による被害の全容がまだまだ把握できず、復興の緒にもつけない状況ですが、私たちも日本代表のスローガン「ワンチーム」の精神で、被災地のために何ができるの考えなければならないと感じました。

悲願のベスト8進出を決めたラグビー日本代表。
10月20日(日)の準々決勝・南アフリカ戦でもラグビーが持つチカラを日本中に届けてくれると信じています。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ。
1999年南海放送入社、2008年~報道部(記者として愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在はデスクとして活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースなどを分かりやすくお伝えます。

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