第31回「永江・嘉田『碧水会』始動 新党発足は?」 

オピニオン室

■参院選後 初の愛媛入り

この夏の参議院議員選挙愛媛選挙区で初当選した永江孝子さんが参議院で、新会派「碧水会(へきすいかい)」を結成しています。
会派のメンバーは2人で、永江さんと同じく、野党統一候補として参院選滋賀県選挙区で初当選した元滋賀県知事の嘉田由紀子さんが代表を務めています。
この「碧水会」の2人が9月末、参院選後初めて愛媛入りしました。

■少数会派の苦悩

2017年の衆院選をきっかけに分党した旧民主党(民進党)の立憲民主党と国民民主党などが国会で、共同会派を結成しました。その結果、参議院には現在、「自民党・国民の声」を第1会派に9つの会派(交渉会派5つ含む)が存在しています。
議会制民主主義は、数が全てで、参議院でも本会議での質問時間や人数、委員会のポスト、議会事務局からの業務連絡の順序に至るまであらゆる場面で会派の人数によって差が生まれます。
さらに永江さんらによりますと、地方選出議員の職務を円滑に遂行するために設置されている議員宿舎の部屋数も会派人数によって振り分けられるそうで、2人会派の「碧水会」には1人分しかあてがわれておらず、様々な面で苦労しているという事です。
こうした状況ではありますが、意思決定の速さや自らの政策をしがらみなく推進できる点など少数会派ならでは強みもあると言います。

■永江・嘉田『碧水会』新党発足は?
永江さんと嘉田さんが9月末に松山市内で開いた支援者との意見交換会。
その中で、「碧水会」の今後の在り方についてどうすべきか、2人が支援者から意見を求める場面がありました。質問項目は、次の④つ。

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①、立憲民主党・国民民主党等の共同会派に合流する
②、しばらく様子を見る
③、会派「碧水会」としてこのまま頑張る
④、人数を増やして新政党を立ち上げる
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これらの質問に対し、支援者の回答は様々でしたが、②と③を支持する意見が多数を占めました。

※支援者意見の抜粋※
「参院選には野党統一候補として勝利した。小異を捨てて大きな問題解決に臨んでほしい」
「永江さんは最初から完全無所属でどこの推薦ももらわず参院選で勝利した。いまの野党はまとまっておらず見極めてほしい」
「大きな組織に入れば女性ならではの独自の視点が埋もれてしまう」
「同志を集めて(政党として)全力疾走してはどうか」
※ ※ ※ ※ ※

このやりとりの中で、私が注目したのは、やはり、“新党”の話題でした。
嘉田さんは、2012年に新党「日本未来の党」を結成し、現職の滋賀県知事でありながら政党代表を務めました。しかし、当時のことを嘉田さんは“悪い記憶“と表現しました。
2011年の東日本大震災による原発事故を受け、翌12年の衆院選で、原発問題を争点化すべきと”卒原発“を掲げ、選挙戦に挑んだものの、候補者が乱立し、野党間で潰し合った結果、大きな成果を得られなかったからです。
このような背景がありますが、会場の支援者からは、永江さんと嘉田さんに新党発足を望む声も挙がっていて、「碧水会」の2人が、今後どのような判断を下していくのか注目が集まります。

■次期衆院選 愛媛4区の動きは?

一方、夏の参院選で永江さんに敗れた自民党県連。
現在、「再生会議」を立ち上げ、党員などから意見を集約しながら参院選の総括と組織再生に向けて取り組んでいます。
9月27日には、大洲市で県連幹部や南予の自民党支部の代表者らが出席して、「再生会議」が開かれました。そして、その会議終了後、衆議院愛媛4区選出の現職・山本公一衆議院議員の後援会から山本氏が体調不良を理由に次期衆院選に出馬しない意向であることが報告されました。注目される後継者については、「世襲や後継指名をしない」という山本氏の意向が伝えられ、具体的な名前は上がりませんでした。
次期衆院選に向け、愛媛4区では、愛媛にゆかりのある官僚や山本氏と幾度も選挙で戦ってきた桜内元衆議院議員の名前が取り沙汰されていますが、立憲民主党の新人、杉山氏以外に出馬を表明した立候補予定者はいない状況です。
山本氏のこのタイミングでの不出馬表明には、夏の参院選で候補者擁立が遅れ、選挙戦で後手に回ってしまった自民党県連の苦い経験が背景にあると見られています。
このため、依然として、県議会会派が分裂状態にある自民党県連には、一枚岩となって次期衆院選に万全の態勢で臨むための早急な組織再生が求められます。

永江・嘉田『碧水会』新党結成の動きは?
そして、次期衆院選愛媛4区の対決構図は?
県内の政治情勢から目が離せない日が続きます。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ。
1999年南海放送入社、2008年~報道部(記者として愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在はデスクとして活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースなどを分かりやすくお伝えます。

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