第30回 「女子大学生誤認逮捕 自白の強要はー」

ニュース解説

■誤認逮捕発覚から3か月を経て ようやく…

愛媛県警松山東警察署が女子大学生を誤認逮捕した問題。
2019年7月の誤認逮捕発覚からおよそ3か月を経て、県警の調査結果がようやく公表されました。
公表の場に選ばれたのが、10月3日に開催された9月定例県議会のスポーツ文教警察委員会でした。
調査結果の公表について、県警は、これまで県民の代表である県議会で明らかにするとしていました。
これに対し、県議会からは47人全ての議員が出席する本会議での説明を求める声が挙がっていました。
しかし、9月定例会の本会議では、誤認逮捕に関する質問が挙がったものの、県警から調査結果について詳細な答弁はなく、結局、一部の議員(委員長含め8人)しか出席できない委員会の場での報告となりました。

 ■最大のポイントは「自白強要の有無」
今年1月、松山市でタクシーの車内から売上げ金などおよそ5万5000円が入ったセカンドバッグを盗んだとして、窃盗の疑いで誤認逮捕された女子大学生が弁護士を通じて発表した手記には、生々しい取り調べ様子が綴られていました。

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【取調官】
「犯人なら目の前にいるけど」、「いつ自分がやったというか待ってるんだけど」、「二重人格?」、「就職も決まっているなら大事にしたくないよね?」、「罪と向き合え」、「認めないと終わらないよ」etc…。
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女子大学生が一貫して容疑を否認していたにもかかわらず、捜査に関わった刑事全員が女子大学生の話に耳を傾けることは無く、“自白を強要”するかのような言葉を執拗に言われたとしています。
このため、県警による『自白強要の有無』が調査結果の最大のポイントとして、注目されていました。

■取調官の発言は認めるが「自白強要はなかった」

県警は調査の結果、取り調べの中で、上記の取調官の発言について「あった」と認め、「女子大学生の尊厳を著しく侵害すると共に不安を覚えさせ、困惑させかねない不適切な言動だった」と、反省を口にしました。
しかし、「女子大学生の自由な意思決定を阻害するような、任意性を欠く、違法な取り調べとまでは認められなかった」と結論付けました。
つまり、女子大学生が自白を強要するかのような言葉を執拗に言われたとしている一方で、県警は、取調官の発言を認めた上で、“自白を強要していない”と主張しているのです。

再三にわたる委員からの質問に対しても県警は、歯切れの悪い答弁を繰り返しました。
矛盾する双方の主張のどちらを信用すればいいのでしょうか。

 また、県警は、今回の誤認逮捕に関係した職員各個人に規律違反は認められなかったため「処分は行わない」としています。

■ずさんな捜査過程も明らかに
この日の報告では、ずさんな捜査過程も明らかになりました。
女子大学生を誤って逮捕するきっかけとなったタクシーのドライブレコーダーには、映像のほかに真犯人の女を愛称で呼ぶ同乗者の声も録音されていたのです。
警察の説明によると、録音されていた愛称は、真犯人の女の名前を連想させるものだったものの、捜査員が聞き間違えていたというのです。さらに真犯人の所持品と女子大学生の所持品も異なり、矛盾していたそうです。
県警は、再発防止策として、2018年の1年間で381件にものぼる警察署の通常逮捕事案について、当面の間、県警本部で供述内容や証拠の吟味などの事前審査を行い、チェック態勢を強化するとしています。

■女子大学生のケアを最優先に
取調室という密室の中で、やってもいない窃盗事件について、尊厳を著しく侵害する言葉を浴びせておきながら自白の強要はなかったという主張は、県民にどのように受け止められたのか?

県警には、被害にあった女子大学生に対する徹底的なケアに最優先に取り組んでもらうとともに、再発防止策の順守と徹底が求められます。

記者プロフィール
この記事を書いた人
御手洗充雄

1976年松山市生まれ(現在43歳)、 1999年南海放送入社、2008年~報道部(愛媛県警記者クラブ、松山市政記者クラブ、番町クラブなどを歴任し、現在も記者として活動中)
約10年の行政記者経験を基に県政・市政ニュースを分かりやすくお伝えます。
 

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