MGC 鈴木健吾(宇和島東出身)大健闘!

ニュース解説

マラソンの東京五輪代表者を決めるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)が行われた。大会出場資格を得た日本の精鋭中の精鋭30人が上位2名に与えられる東京五輪代表権を目指し暑さの残る東京を駆け抜けた。愛媛県関係者としては唯一宇和島東高校出身の富士通・鈴木健吾が出場。持ちタイムやマラソン経験などは他の選手と比べて見劣りするため大会前は注目される存在ではなかったが、大一番でしっかりと自分の力を出し切りトップ争いを繰り広げた。

鈴木選手は宇和島東高校時代にインターハイで入賞するなど非凡な才能を見せ、神奈川大学で大ブレーク。2016年の箱根駅伝で2区区間賞を獲得。4年生の全日本大学駅伝ではアンカーを務めチームを日本一に導いた。社会人ではマラソン選手として期待されていたが富士通入社1年目はケガの連続で大会出場どころか練習もままならなかった。それでも諦めずに競技を続け怪我が癒えてきた今年4月。決して万全の状態ではなかったというがドイツのハンブルクマラソンで復帰。MGCの出場資格をギリギリで取得した。

設楽、大迫、服部、井上など日本を代表するランナーは「BIG4」と呼ばれ優勝候補として注目を集めた。一方、マラソンにおいて何の実績もない鈴木選手は4月以降「BIG4」に対抗するため月間1300キロを走り込み、サウナで暑さ対策をするなどこの一本にかけてきた。これまで走ったマラソンは大学卒業時の「東京マラソン」とMGCの出場資格を得た「ハンブルグマラソン」のたった2本。しかも決して万全ではなかった。鈴木選手自身が自分のポテンシャルがどこまであるのか実際は分からないのである。富士通の指導者も「密かに鈴木に期待している。夏の練習もほとんど(練習の設定タイムを)外すことがなかった。彼は強い」と鈴木選手の潜在能力に期待を寄せていた。

2019年9月15日AM8:50。MGCの号砲が鳴った。レースは「最初か自分のペースで行く」と宣言していた前・日本記録保持者設楽選手が飛び出した。1キロ3分前後のハイペース。その他の29人の選手は自重し大きな集団を形成。10キロ。先頭の設楽選手と集団の差は2分以上に広がる。15キロ過ぎから鈴木がペースアップ。ついて行けない選手がこぼれ2位集団が一時鈴木・中村・大迫・服部の4人になる。20キロを越えてペースが落ち着き後方から追い上げた選手を含み2位集団が7人に。27キロ過ぎから先頭の設楽に異変。ペースがガクンと落ちた。残り10キロの時点で2位集団が9人に。先頭との差は1分差。35キロ地点から再び鈴木が集団を引っ張る。37キロで遂に先頭設楽を捉え2位集団は先頭集団に。さらに鈴木が仕掛けて先頭集団は9人から6人に。五輪が見える!!しかし39キロ。チームメイト中村がスパート。大迫・服部は反応できたが鈴木に余力が残っていなかった。結局優勝中村、2位服部、3位大迫。鈴木は7位だった。敗れはしたが鈴木が日本のトップクラスと渡り合えることを証明したレースとなった。

東京五輪の出場は相当厳しくなった。しかし今回厳しいレースを経験したことでうっすらと次の五輪が見えてきたのではないか?心が熱くなる走りを見せてくれた。今回は急な仕上げでMGCに臨んだ鈴木。ゆっくり休んで万全の体調で次のレースに出てきてほしい。そして僅かに残された東京五輪3枚目の権利に挑戦できるようであれば、そのチャレンジを全力で応援したい。

記者プロフィール
この記事を書いた人
藤田勇次郎

1975年生まれ。奈良県大和郡山市出身。1998年入社。
高校野球・サッカー・日米大学野球・マラソン・トライアスロン・アームレスリング・駅伝・ボウリング・剣道・ビーチバレーなど各種実況担当。
「松山大学女子駅伝部」を10年にわたって取材。4本のドキュメンタリーを制作。

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