■老舗酒蔵の挑戦
1878年(明治11年)創業の愛媛県新居浜市の老舗酒蔵「近藤酒造」。
この老舗酒蔵が新たな挑戦として、クラフトジン「パチパチ」を製造・販売しました。
クラフトジンとは、こだわりを持った少量生産のジンのことで、「パチパチ」には、八幡浜のブランド温州ミカン「真穴みかん」を使用しています。
■なぜ、日本酒の蔵元がクラフトジン?
クラフトジンを製造したきっかけは、えひめ産業振興財団の「えひめ農商工連携ファンド」でした。
このファンドは、愛媛県内の農林漁業者と中小企業者(加工業者)を結び付けて、新商品開発をバックアップするもので、事業に関するアドバイスや財政支援などを行います。ファンド事業がスタートして、今年度で10年の節目を迎えますが、ファンドを活用して生み出された商品は、これまでに約300アイテムにぼります。
■5代目蔵元の挑戦
※5代目蔵元 近藤嘉郎社長
近藤酒造は、140年余りの歴史がありますが、焼酎やワイン人気に押され、一時、日本酒の製造を休止していました。しかし、5代目蔵元の近藤嘉郎社長が、20年ほど前に自ら杜氏となって自社醸造を再開。造り酒屋として復活を遂げました。その後、甘酒やリキュールの製造などにも取り組む中で、このファンドが橋渡し役となり、2018年4月に新居浜市の老舗酒蔵と八幡浜市の真穴みかんがコラボする新商品の開発が始まりました。
開発には、新居浜市の近藤酒造と八幡浜市の西宇和農業協同組合、旬香物産の3者が携わりました。
■試行錯誤
日本酒以外の新しいファン獲得に向け、これまでに製造経験が無い、クラフトジンの開発に試行錯誤が続きます。クラフトジン「パチパチ」のボタニカル(原料)は、真穴みかんの果実や皮、花びらなど全8種類。
この8種類を近藤酒造特製の蒸留機で、それぞれ別々に蒸留し、独自の配合でブレンドしていきます。
その際にも冷凍した花びらでは、風味が損なわれるため、わざわざ5月の開花時期にみかん畑を訪れ、手摘みした生の花びらを使用するなど徹底的にこだわりました。
■カクテルとして広がる可能性
こうして、2019年8月8日(パチパチの日)に発売された、クラフトジン「パチパチ」。
200ミリリットル(2,000円+税)と720ミリリットル(5,000円+税)の2種類を商品展開しています。
※新居浜市の「バータイニーバブルス」
新居浜市の「バータイニーバブルス」では、この「パチパチ」を使った〝ジントニック″や〝ホワイトレディー″など様々なカクテルを扱っています。
「パチパチ」には、真穴みかんが使用されていますが、キウイフルーツやメロンなど青い果物との相性も良く、バーテンダーの田尾さん曰く「とても可能性が高いジンで、色んなカクテルに応用できる。これからどんどんバラエティ豊かに広がっていくと思う」と、その将来性に期待を寄せています。
近藤社長は、「真穴みかんの生産者が自分たちの作ったみかんのジンだと、胸を張って自慢してもらえるように『パチパチ』を広く普及させたい」と、意気込みを語ってくれました。
カクテルを手に耳を澄ませば、クラフトジン「パチパチ」のネーミングの由来となった、真穴地区特有のみかんの収穫方法〝二度摘み″の「パチ」、「パチ」というはさみの音が聞こえてきそうです。