■県庁に届いた札束の総額はいくらに?
私の解説委員ブログ、2019年3月14日付け「第2回愛媛県庁に届いた1億円のその後・・・」で、お伝えしていた愛媛県への“謎!?の寄付金”。
“推定1億円”と言われていたこの寄付金の正式な金額がこのほど判明しました。
果たして一体いくらになったのか・・・?
その前にこの寄付金について、振り返ります。
■“塊”となった一万円札束の状態を確認
1月29日に愛媛県庁に届けられた一つの段ボールには、大量の一万円が札束状に入っていました。
段ボールの宛て名は、中村知事で、差し出し人の名前は、匿名となっていました。
また、段ボールの中には、手紙が同封されていて、「住所、氏名は架空です。何かの役に立ててほしい。そっとしておいてほしい」などと、書かれていました。
県の担当者がざっくりと数えてみたところ、その額なんと“推定およそ1億円”!!
しかし、当時、私が現場で実物を確認したところ、水分を含んでいたのか、札束は、“塊”となっていて、表面に新聞紙が張り付いた状態の札束もありました。
このため、この劣化が進んだ一万円札が、どの程度、換金できるのかに注目が集まっていました。
日本銀行に確認したところ、
①残っている面積が3分の2以上の場合→『全額』引換え。
②残っている面積が5分の2以上、3分の2未満の場合→『半額』引換え。
③残っている面積が5分の2未満の場合→価値は無く失効『つまり0円』。
という、換金条件だということです。
その作業は、意外とアナログで、ドライヤーなどを使って、“塊”となっているお札を傷めないように根気強く乾かして、はがし、本物かどうか確認した上で、状態を判断して金額を確定するということでした。
■さて、鑑定結果は・・・
日本銀行松山支店が、今年3月から7月までの5か月間をかけて、地道な鑑定作業を行った結果、確定した金額は、1億661万円でした。
・全額:10,619枚=1億619万円
・半額:84枚=42万円
・失効:19枚=0円
・合計:10,722枚(1億661万円・全て1万円札)
意外にも失効したお札はわずか19枚で、1万枚を超える1万円札が有効となりました。
これまでに愛媛県は、この大量の1万円の札束について、警察に相談し、盗難や紛失の届出が出ていないことなどから事件性が低いと判断。さらに、手紙に寄付の意向が示されていることから、弁護士とも相談し、寄付金として処理することにしました。
■善意の寄付を有効活用
県は、鑑定金額が確定したことからこの1億円余りの寄付を9月補正予算に歳入として繰り入れ、「子ども子育て応援基金」と「災害に強い愛媛づくり基金」に積み立てて活用することにしました。
今後、9月定例県議会で、この費用を盛り込んだ補正予算案が可決されれば、子育て支援や災害対策に役立てられます。
中村知事は、8月29日に臨時の記者会見を開き「寄付者の善意に対しましては、改めて心から感謝を申し上げたい。また、日本銀行のきめ細かい作業とご尽力にも感謝したい」と感謝の言葉を述べました。
思わぬ形で愛媛県が受け取ることになったなんとも“不思議な寄付金”。
1人でも多くの県民のために役立つことを祈っています。