■道後に到来した「巨大火の鳥」
国の重要文化財・道後温泉本館は、耐震化に伴い、2019年1月15日から営業を続けながら約7年間にわたる保存修理工事を行っています。
工事中は、本館建物の瓦などを取り外すため、「素屋根(すやね)」と呼ばれるシートで建物を覆って保護する必要があります。
松山市では、工事中でも観光客などに道後温泉を楽しんでもらいたいと、「素屋根」に「巨大火の鳥」のラッピングアートを描きました。
道後温泉本館に到来した「巨大火の鳥」の大きさは、東西19m、南北34m、高さ20mと、存在感抜群。
「巨大火の鳥」の隣には、明治時代に道後温泉本館の改築に尽力した、道後湯之町の初代町長・伊佐庭如矢(いさにわ・ゆきや)をはじめ、聖徳太子や道後温泉本館のシンボル・白鷺などが描かれています。
この巨大ラッピングアートについては、『ニュースの深層の第15回「いま道後がアツイ!!①~ツバメの恩返し!?~」』で、すでにお伝えしていましたが、そのときの完成イメージ図とぴったり重なる巨大ラッピングアートが目の前に現れると、なんだか不思議な感覚に陥りました。
■楽しめる仕掛け続々
工事中の道後温泉本館には、ラッピングアートに加え、様々な仕掛けが隠されています。
≪仕掛けその① 「ARと道後温泉のコラボ」≫
専用のアプリをダウンロードして、フォトスポットにかざすと、火の鳥が登場するアニメーション動画が見られるようになっています。ARスポットは全7か所で、オリジナルフォトフレームで写真撮影を楽しむこともできます。
≪仕掛けその② 「のぞき穴」≫
本館北側には、パワースポットとしておなじみの〝玉の石″や、工事の様子を覗く事ができる「のぞき穴」があります。仮囲いの一部が透明となっているので、チラッと、覗いてみてはいかがでしょう。
■工事そのものを観光資源に
長期間にわたる保存修理工事に伴い、観光客の減少が懸念されますが、松山市では、「ピンチをチャンス」にと〝みせる工事″で〝工事の観光資源化″を図っています。
8月10日には、地元関係者や小学生などを対象にした工事見学会を始めて開催しました。
見学者は、工事中で立ち入り禁止エリアの本館西側「玄関棟」と「又新殿・霊の湯棟」に潜入。
工事監理者のガイドを聞きながら工事期間中しか見ることができない本館の裏側に興味津々でした。
このうち、「玄関棟」では、屋根裏に使われた木材の古さや造りなどから、建物の増改築を繰り返した歴史がうかがえます。
また、「又新殿・霊の湯棟」には、明治時代に本館の建築に携わった職人の名前や日付が墨で書かれた貴重な天井板が保存されていました。
また、現在は、銅の板が使われている本館の屋根についても約50年前には、ヒノキの表面の皮を加工した檜皮葺(ひわだぶき)だったことなどを知ることができ、建築から125年を迎える本館の歴史を学ぶことができました。
※昭和44年(1969年)檜皮葺屋根 松山市提供
■これからが正念場
松山市によりますと、工事がスタートした1月15日から7月14日までの半年間で、道後温泉本館の入浴定員数が150人から80人におよそ半減しているにも関わらず、道後温泉本館、椿の湯、道後温泉別館飛鳥乃湯泉の3施設あわせた1日平均入浴客数は、2838人と前年同時期(3082人)と比べ、約8%減にとどまっているということです。
一方、道後温泉旅館協同組合によりますと、組合に加盟するホテルや旅館の宿泊者数の実績は、前年同月比で、4月が93%、5月が91%、6月が94%と減少しているそうです。
様々な取り組みで観光対策に取り組む道後のまちは、これから正念場を迎えます。