昇格チームとの違い ~FC今治総括~

オピニオン室

先日、“J3リーグ・アウォーズ”が初開催され
唯一ベストイレブンに選ばれたのが
不動のセンターバック、安藤智哉選手でした。

34試合中29試合出場。
ディフェンダーなのに6得点!は出色の出来です。

大卒2年目の23歳、190㎝の大型DFは
攻守でチームを救いました。

愛媛FCとの伊予決戦第1号ゴールも印象的ですが
圧巻は
32節対藤枝MYFC戦でのプレー。
相手シュートをジャンピング・ヘッドでクリア。
すると勢いあまってクロスバー(ゴールの上枠)まで
ヘディングしてしまったという💦

ゴールマウスの高さは2m44㎝。
いくら長身とはいえ
なんちゅうジャンプ力!
その身体能力に誰もが度肝を抜かれました。
(DAZNJ3アウォーズで見られます)

活躍は喜ばしいことですが
完全に“見つかってしまった”ので
他チームがほっておくわけはなく。
上位カテゴリーの触手が伸びているとかいないとか…

さて。
チームは最終順位5位。
J昇格後、7位⇒11位⇒5位なので
過去最高順位でしたが
目標の昇格は出来ず。

ここでは橋川前監督が
「我々が目指すサッカーをしている」とリスペクトし、
2位で昇格した藤枝MYFCと
スタッツで比較し
課題を掘り出してみます。

得点:今治55点(3位タイ)、藤枝58点(2位)
失点:今治40点(5位)、藤枝29点(2位)
これも愛媛FCと同じく納得の数字でしょうか。

では、何が大きく違ったか。
「Football LAB」で見てみましょう。

シュート、枠内シュート、ドリブル、クリア
などの項目でお互い上位にランキングされています。
大きな差があるのは
「30mライン侵入回数」と
「ペナルティーエリア侵入回数」です。
前者は今治13位、藤枝1位。
後者は今治9位、藤枝2位。
ここに順位の差が生まれたのかもしれません。

先日、新監督が発表されました。
それまでコーチだった
高木理己氏(44歳)です。
普段から高木コーチが
練習を仕切っていましたし
“岡田メソッド”を知る指導者が
監督になると思っていたので内部昇格に
驚きはありませんでした。

実は今季、高木コーチが一度だけ
FC今治の指揮を執った試合があります。

22節対鹿児島ユナイテッド戦です。
直前に橋川監督と主要メンバー17人がコロナ感染。
超緊急事態の中、監督代行として
アウェイに乗り込みました。

しかも、当時2位(今治6位)の強豪相手に
控え選手中心で戦うという絶体絶命の中、
4-3で殴り合い見事勝利。
「この試合に関しては熱量をもって
臨んだことが、この勝利をもたらしてくれた。
それを『今治の底力』と感じてもらえたのならうれしい」

試合後の高木コーチのコメントです。
誰もが負けを予想した中で(スイマセン私もです)
彼らだけは“やってやる!”と思っていた。
ドイツを前にした日本代表と同じです。

そんな“白波スタジアムの歓喜”を生み出したのが
高木新監督です。

彼は希代の“モチベーター”でもあります。
練習中も大きな声で指示を出します。

「今のままじゃダメだ!パス、シュート、切り替え
全てをJ2仕様に変えろ!」
「昇格へのプレッシャーは試合中に必ず来る!
自信をもってやるんだ!」
私の取材ノートには練習中の
彼の熱い言葉がいくつもメモされています。

振り落とされそうになりながら
昇格争いで最後の最後まで粘れたのは
高木コーチの力もあったはず。

「いい時と悪い時の波があった。
来季は決定的に点を取れる選手を
もう一人獲りたい。
名のある監督がたくさん来るので厳しくなる」と
気を引き締めた岡田さん。
次は新スタジアムでの開幕となります。
背水の陣で臨むJ4年目。
もう失敗は許されません。

 

記者プロフィール
この記事を書いた人
江刺伯洋

江刺伯洋(えさし はくよう)1971年3月1日松山市生まれ。
入社以来アナウンサーとして主にスポーツやラジオを担当。特にサッカー実況は少年からJリーグまで全カテゴリーをこなしてきた。
著書に愛媛FCのJ昇格劇を描いた「オレンジ色の夜明け」、「群青の航海 FC今治、J昇格まで5年の軌跡」がある。【現担当番組】DAZNのJリーグ中継(FC今治、愛媛FC)、ラジオ生ワイド「江刺伯洋のモーニングディライト・フライデー」(毎金曜午前07:15~11:09)など。

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