“うねり”を起こせ ~愛媛FC総括~

オピニオン室

J3リーグが終了しました。
愛媛FCは7位フィニッシュでした。

恒例の総括を
様々な数字でアプローチします。

“得点”は51で上から7番目。
“失点”は41で下から6番目。

納得の順位ですが
実は上位の数値もあります。
“クリア”が2位です。

これはGK徳重選手の活躍で
攻められていたことでもあるので
一概に喜べる数字ではありませんが、
それでも徳重選手が
いなければ失点数は確実に増えていたはず。
間違いなく今季MVPです。

徳重選手が出場しなかったのは
25節宮崎戦のみで
他、33試合フル出場。

これはリーグ全体10位の出場時間であり
30歳以上のプレーヤーでは3位。
38歳は最年長という称賛されるべき数字です。

他、リーグ1位の数字もあります。
“得点選手数”です。
「19」。
これは得点を決めた選手が
チームに何人いたかという数字です。
リーグで一番多くの選手がゴールを決めたのが
愛媛FCでした。

“最多得点”。
20節の愛媛FC7-2ガイナーレ鳥取が
1位。

“最多観客数”
24節伊予決戦・第2ラウンド
愛媛FC3-2FC今治が9,126人でリーグ4位。

このランキング上位13位までは
全て人気チーム“松本山雅絡み”の
ゲームなので(1位松本山雅対長野パルセイロは1,5912人)
純粋に観客動員が凄かったダービーマッチ
と言えます。

しかも、ゲーム内容(スコア)も
激しい点の取り合い。
間違いなく今季のダービーマッチ・ベストバウトです。

一方で気になる数字もあります。

Jリーグ全チームに関する
あらゆるデータを数値化している
「Football LAB」によると
愛媛FCが最下位18位の数字があります。
それは“タックル”です。

サッカースタイルによって
この数字は左右されますが
もしかするとここに大きなヒントが
隠されているのかもしれません。

実は“反則”も424で16位で下から3番目です。

“タックル”が少ないから
“反則”も少ないのではないか。
球際で綺麗にやりすぎる事で
チャンスを手放しているのではないか。

因みに
今年、昇格を決めたいわきFCの反則は2位で
藤枝MYFCは4位です。

もちろん、
反則は奨励されるものではありません。
ですが
このJ3リーグというカテゴリーは
奇麗なサッカーをしているだけでは
“昇格”は難しいのではないか。

選手はJ2でも十分戦える戦力が揃っていました。
けれど何かが足りないのは明白です。

もうひとつの懸念材料は形而上的な話です。

それは
“世間”がこの状況に慣れてしまうことです。

「ああ、愛媛FCってJ3のチームやろ」
と世の中の人が慣れてしまうのが
一番怖い。

敏腕社長として
ファジアーノ岡山を人気チームに押し上げ
Jリーグ専務理事にヘッド・ハンティングされた
木村正明さんが以前、こう言ってました。

「チームが昇格するときは“うねり”が
あるんですよ」

木村さんが言う“うねり”とは
選手がプレーで起こす“うねり”であり
ファンがスタジアムで熱狂する“うねり”であり
地域が地元を動かす“うねり”の事だと
私は思っています。

他にもフロント、メディア、人気、実力…
たくさんありますが、
そのどれか一つが欠けても
“うねり”は起こりません。

こう書くと何か大ごとのような気がしますが
心配は杞憂です。
だって一度、私たちはその“うねり”を
起こしたのですから。

 

 

 

記者プロフィール
この記事を書いた人
江刺伯洋

江刺伯洋(えさし はくよう)1971年3月1日松山市生まれ。
入社以来アナウンサーとして主にスポーツやラジオを担当。特にサッカー実況は少年からJリーグまで全カテゴリーをこなしてきた。
著書に愛媛FCのJ昇格劇を描いた「オレンジ色の夜明け」、「群青の航海 FC今治、J昇格まで5年の軌跡」がある。【現担当番組】DAZNのJリーグ中継(FC今治、愛媛FC)、ラジオ生ワイド「江刺伯洋のモーニングディライト・フライデー」(毎金曜午前07:15~11:09)など。

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