“奇跡”を観に来ませんか

オピニオン室

「ああ、そうですね。
自分達がやるべきことをキチっとやってれば
神様がご褒美をくれるかもしれないですね」

勝利後の記者会見。
“監督は奇跡を信じますか”と質問したとき、
FC今治・橋川監督はこう答えました。

J3リーグは残り3試合のカウントダウン。
昨日はホームで2位の強豪・藤枝MYFCと対戦。
5位のFC今治は引き分け以下で
今シーズンでのJ2昇格が消滅という
剣が峰に立たされていました。

勝ったとしても
他会場で3位の松本山雅が勝てば
同じくFC今治の夢は絶たれるという
圧倒的不利な状況にも関わらず
見事、上位チームを1-0で下しました。

その直後、興奮状態そのままで
上記のような青臭い質問をしました。
「ただ、やるべきことをやらずなら
(神様は)ご褒美はくれない。
一番大事なのはクラブのフィロソフィ(哲学)を
成し遂げるために
ファン・サポーターの為に
ミッション・ステイトメント(行動指針)を実行する。
それがこのクラブの良さだと
最近改めて思ってます」

実は監督会見中、松本山雅は試合中でした。
その時点で松本が負けていたので
このままだとFC今治の昇格の可能性は
残ります。
引分になってもダメ。
生き残るためには絶対に松本に
負けてもらわないといけません。
どうしても気になるので
失礼を承知の上で
その試合映像を観ながらお伺いしますと
断ったうえで質問を続けさせていただきました。

“今、松本山雅が富山に負けています。
残り30分ほど試合がありますが
監督はどちらで観ますか?”

この答えも即答でした。

「観ないですw」

「(次の対戦相手の)長野の試合を観ます。
松本も富山も(残り2試合の)対戦相手じゃないので。
ここからは“見えないもの”が影響してくる。
今、昇格圏内の上位チームは“勝たなければいけない”。
(ギリギリで残っている)我々は“勝ちたい”。
その気持ちをピッチで表現することが重要なので」

結局、松本山雅は3-4で
カターレ富山に敗れ、
ほんのわずかですが
昇格の道は残されました。

決勝点を決めた千葉寛汰選手にも
同じ質問をしました。

「(奇跡は信じますか?)うん…
やるべきことをやっていれば起きると思います❕」

監督と選手が同じことを言う時、
チームは間違いなく強くなっています。

「フワついたり、他のチームの事を
気にしたりしてたら起きないと思います」

次の日曜日13日が最後のホームゲーム。
ここで勝ったとしても
昇格対象チームが勝てば
同じように夢は潰えます。

もうひとつ重要なことがあります。
その日はこのスタジアムでやる
最後の公式戦でもあります。

2017年9月10日。
愛媛初のサッカー専用スタジアムとして
建設された
「ありがとうサービス.夢スタジアム」

当時はまだJFLに所属していました。
あれから5年間、喜びも悲しみも
このスタジアムで共有しました。

来年からは向こうに見える
新スタジアムにお引越しです。
橋川監督も強い思い入れがあります。

「(杮落としで)風船飛ばしたりして
思い出がいっぱいあります。
日本で無二のスタジアム。
新スタジアムもそう。
夢スタラストを勝利で締めくくるため精一杯、戦いたい❕」

今年5月に加入した若きストライカー、千葉選手も
このスタジアムでのゴールを誓います。
「スタッフから話は聞いていて
クラブや夢スタの歴史を認識しています。
勝って終わらないといけない。
その為にしっかり自分のゴールで勝たせたいです❕」

アナタは奇跡を信じますか?

 

記者プロフィール
この記事を書いた人
江刺伯洋

江刺伯洋(えさし はくよう)1971年3月1日松山市生まれ。
入社以来アナウンサーとして主にスポーツやラジオを担当。特にサッカー実況は少年からJリーグまで全カテゴリーをこなしてきた。
著書に愛媛FCのJ昇格劇を描いた「オレンジ色の夜明け」、「群青の航海 FC今治、J昇格まで5年の軌跡」がある。【現担当番組】DAZNのJリーグ中継(FC今治、愛媛FC)、ラジオ生ワイド「江刺伯洋のモーニングディライト・フライデー」(毎金曜午前07:15~11:09)など。

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