2019年3月18日(日)「まつやまスポーツフォーラム2019」で五輪メダリスト末續慎吾選手のトークショーで聞き手を務めた。
末續選手と言えば、桐生、山縣、多田、サニブラウン、ケンブリッジ選手など、キラ星のごとく現れる日本の短距離スターが、今だ破ることが出来ない200m20″03の日本記録を16年保持しているスーパーアスリート。そして2003年のパリ世界選手権で短距離界日本人初となるメダル(銅)を獲得した日本短距離界のレジェンドだ。
最近話題になったのが2008年の北京五輪。4×100mリレー(飯塚、末續、高平、朝原)で獲得した「銅」メダルが、その大会で「金」メダルを獲得したジャマイカの選手のドーピングが2017年に発覚したことにより「銀」メダルに繰り上がったこと。リオで感動を呼んだ日本人「初」のハズだった4×100mリレー(山縣、飯塚、桐生、ケンブリッジ)は「日本人2回目」となったことは笑い話になっている。
さて、この末續選手は現在38歳。まだ現役を続けている。
「小さい頃に始めた陸上。僕は走ることが本当に好き。2017年9年ぶりに37歳で出場した日本選手権の競技終了後、記者から引退をするのか?という質問を受けた。僕はその時、引退ってなんだ?という思いになったんです。好きなことを続けてはいけないのか?現役と引退ってなに?と」
日本人アスリートの中にも末續選手のような考え方をする選手が増えている。サッカー界では三浦和良選手が52歳。野球界ではイチロー選手が45歳。ラグビーでは東芝の大野均選手が40歳。スキージャンプの葛西紀明選手は46歳。それぞれ「現役」を続けている。まさに「引退って何?」なのである。
末續選手はこの境地に至り、去年「EAGLERUN(イーグルラン)」という生涯スポーツを楽しむためのスポーツクラブを立ち上げた。ここでは「好きだから運動する」を大切にしているという。
「長く続けるにはやりすぎないことが大切。自分のクラブでは目標の回数を決めても嫌になったらやめてもいい。気分が乗らないときは見学だけでもいいよと言っています。スポーツは好きで続けていくものだから。」
この考え方は世界を転戦し世界の人々と触れ合う時に感じていたという。
「これは世界でメダルを狙うとか野球、サッカーなどのプロフェッショナルアスリートにはあてはまらない。でも最初はみんなアマチュア。そしてほとんどの人がアマチュアとしてスポーツに触れ合う。だから好きでいて欲しい」
末續選手はトークショーで大学時代の苦労も話しもしてくれた。
「僕は大学入学時(東海大学)日本選手権に出られるかどうかという選手だった。大学1年の時に散髪店をしていた父が亡くなり、兄弟も3人いて本当にお金がなかった。でも好きな陸上を続けたいので、毎日朝の3時までアルバイトをした。それでもお金がなく、夏休みのある日。財布を見たら120円しかなかった。お腹がすきコンビニにいってパンを手に取ったが、これはすぐになくなってしまう。次はスーパーに行き数個入りの玉ねぎを買った。あまりにもお腹がすいていたので買ってきた玉ねぎを生でかじった。そうしたら情けなくなって涙が出てきたんです。」
もう自分には陸上しかない。
そんな思いで夏を乗り越えた末續選手は、その年の日本選手権で日本一になり、日本代表の仲間入りを果たした。その後は短距離界のスター街道を駆け上っていった。
その他にも為になるお話をされていましたが今日はこのぐらいで失礼します。