試練は何のために与えられると思う

オピニオン室

先週末の土日、
好調だった両チームが敗れてしまいました。
(松本山雅1-2愛媛FC、
FC今治2-3ギラヴァンツ北九州)

5連勝だった愛媛FCはここ3試合勝ちなし。
FC今治は11試合ぶりの敗戦で
連勝は4でストップ。

FC今治は前節の鹿児島ユナイテッド戦。
コロナの集団感染で
大幅にレギュラー選手が離脱する中、
これまで出場機会の少なかった
選手たち中心で
2位の強豪相手に、
しかもアウェイで殴り合いを演じ
4-3で勝利しました。

試合直後、4点目を決めたエース中川は
人目もはばからずに大泣きしました。

これで終わるかもしれない—

大きなプレッシャーから解放された
ストライカー。

「僕は死ぬ覚悟で毎試合を戦っています」

見る者の涙を誘った
今治のサッカー史に残る劇的な勝利。

これで順位を6位から4位に上げ
昇格圏内の2位との勝ち点差を3にしたことで
この勢いのまま5連勝を!
と意気込んでましたが敗れてしまいました。

上位チームに勝てたけれど
下位チームに敗れてしまった。

コロナ明けという
コンディションの悪さもあったでしょうが
この日の選手達は、まるで皆が
足かせを付けてプレーしていたような
硬さがありました。

リスクを避けて守るのか。

リスクを覚悟で攻めるのか。

百戦錬磨のプロ達も見極めが難しい。

これが昇格へのプレッシャーです。

「先制点を取れたが
もっとアグレッシブに行かせておけばよかった。
悔いが残ります」

試合後の橋川監督にも
その想いが滲み出ていました。

それは観ているお客さんもそう。

FC今治が得点をすると
ようやく息継ぎが出来るような緊張感が
ホームスタジアムを覆っていました。

それは愛媛FCも同じです。

お互い昇格へ向けて
黄色信号が見え隠れしています。

リーグ戦は残り11試合。

FC今治は5位で勝点41、2位との勝ち点差が6。

愛媛FCは8位で勝点38、2位との勝ち点差が9。

数字上、昇格への可能性が
なくなったわけではありませんが
2チームとも厳しい状況なのは間違いありません。

FC今治の橋川監督が
残り試合のプランを明かしてくれました。

「我々は
(昇格の目安として)勝点65を目指している。
残り11試合で最低でも8勝以上をしないとダメ。
ここをクリアするために
もう一度やり続けるしかない!」

いよいよ次の土曜日10日は
愛媛FCとFC今治のダービーマッチ。

両者相まみえる伊予決戦第2ラウンド。

このような状況で対戦するとは
予想してませんでしたが
これまでで最もヒリヒリするゲームになるのは
間違いありません。

まさに生き残りをかけた果たし合いです。

両チームに贈りたい言葉があります。

この5日間、自宅待機中に読破した
名作漫画からの名言です。

「試練は何のために与えられると思う
もっと強くなるためだろう
~バガボンド~」

記者プロフィール
この記事を書いた人
江刺伯洋

江刺伯洋(えさし はくよう)1971年3月1日松山市生まれ。
入社以来アナウンサーとして主にスポーツやラジオを担当。特にサッカー実況は少年からJリーグまで全カテゴリーをこなしてきた。
著書に愛媛FCのJ昇格劇を描いた「オレンジ色の夜明け」、「群青の航海 FC今治、J昇格まで5年の軌跡」がある。【現担当番組】DAZNのJリーグ中継(FC今治、愛媛FC)、ラジオ生ワイド「江刺伯洋のモーニングディライト・フライデー」(毎金曜午前07:15~11:09)など。

江刺伯洋をフォローする
オピニオン室