ニュースのウラカタ#35 「トップニュース」

オピニオン室

ニュースのウラカタ#35 「トップニュース」
トップニュースとは読んで字の如く、一番のニュース、番組で最初に報道する項目のことです。

CH.4では、その日の番組の編集責任者を「週デスク」と呼びます。この週デスクが、1週間に渡り、いわゆる編集長を務めます。現在、私を含め3人がローテーションで週デスクを担当しています。週デスクの仕事は多岐に渡りますが、重要なのが取材項目の選択と番組の構成です。①どのニュースを取材するか、そして②それらをどう並べて放送するかを決めるのです。この権限は極めて強く、逆に極めて責任が重いとも言えます。誰が週デスクを務めるかによって、番組の表情が一変することもあります。特にトップニュースに何を選ぶかのかは生命線です。よって週デスクは毎日トップ選びに頭を悩ませているのです。

昨日は特に悩ましい日でした。週デスクは、メインキャスターと解説委員も務めるスーパーガイ・松岡アナウンサー。私はお手伝いデスクとして原稿のリライトなどにあたっていました。

普段、週デスクがとりあえずの並びを決める正午までに入っていた項目を箇条書きするので、皆さんも一緒に考えてみてください。トップニュースと並びです。

・愛媛県内でもウクライナ支援の動き活発(松山、今治、新居浜)
・新型コロナ 速報値で400人以上感染(過去3番目の多さか)
・明日朝にかけ激しい雨が降る可能性
・特集CH.4防災「地震予報士への道」
・松山で交通事故 オートバイの18歳死亡

トップニュース選びのポイントは、視聴者が最も知りたいこと。すなわちCH.4の場合、愛媛の皆さんが一番関心があることを最初に伝えます。なので、全国の視聴者が対象となる日本テレビの並びとは異なります。ちなみに、昨日の日本テレビ「news every.」の並びです。
①北海道観光船事故・続報 ②緊急経済対策・岸田総理会見(LIVE)  ③山梨で頭の骨見つかる・3年前不明の少女か・速報
この2か月、必ずトップもしくは2番目に伝えられていた「ウクライナ情勢」は最初の3項目には入っていませんでした。

正午の段階で、CH.4の松岡デスクは「県内でもウクライナ支援」をトップとし→「新型コロナ400人以上」→「地震予報士への道」と並べていました。

しかし午後、県が新型コロナの会見を開き、”松山市で感染者過去最多” ”児童・生徒の感染者過去最多”という情報がもたらされました。そこで、コロナへの注意喚起が必要との判断から、ウクライナとコロナを入れ替えることになりました。

しかし午後5時、南海放送本社の窓を大粒の雨が激しく打ちつけます。大雨の可能性は織り込んでいましたが、このタイミングでの松山の大雨は想定外でした。しかも尋常ならざる降り方です。急遽クルーを手配し、本社周辺で雨を撮影しました。放送直前のトップニュース変更です。

最終的に、松岡デスクは ①大雨注意喚起 ②コロナ404人感染(児童・生徒過去最多177人感染) ③愛媛県内でもウクライナ支援の動き活発 ④特集CH.4防災「地震予報士への道」という並びにしました。

トップと並びを意識してニュース番組をみると、放送局や番組の姿勢や特徴が現れていておもしろいですよ。

記者プロフィール
この記事を書いた人
宇都宮宏明

西予市宇和町出身、1996年 南海放送入社後、主にテレビ番組制作部門。
「もぎたてテレビ」のディレクター・プロデューサーなど担当。
2018年~「ニュースCH4」デスク(自称”世界で一番優しいニュースデスク”)。

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