ニュースのウラカタ#31「NGワード」
テレビを視聴する習慣のある方なら、おそらく毎日目にする耳にするいくつかのワードを、私は勝手にNGワードに認定して、ニュースCH4の私がリライトを担当する特集や企画においては、勝手に使用禁止にしています。情報番組やニュース番組のやわらかいネタ(特にグルメ)コーナーで、頻繁に使用されるワードです。まずは、以下の文章をお読みください。グルメリポートです。
【例文】
松山市の大街道にある人気のスイーツ店にやってきました。店の看板はシュークリームです。パティシェのこだわりは卵。番組では今回、パティシェのシュークリーム作りに密着しました。冷蔵庫で数時間ねかせることでおいしさが増すとのこと。(中略)オーブンで30分、おいしそうに焼き上がりました。さっそくいただいてみます。(後略)
私の”勝手にNGワード”を全て盛り込んでみました。解説します。
【NGワード①=人気】
「人気」じゃない店を探すのが困難なほど、とにかくよく使われますが、逆に人気ぶりが全く伝わりません。程度も表現できません。という理由でNGとし、別の表現で人気ぶりを伝える工夫をします。ここで頭を使ってステキな表現を発明することで、テレビで取り上げたいほど魅力的な商品や店のことを、より魅力的に伝えられます。
例①)毎朝開店30分前には100人以上が行列するというスイーツ店があります。
例②)あの〇〇氏(誰もが知るスイーツ通)がお忍びでやってくるというスイーツ店があります。
例③)パティシェが今年の世界シュークリームコンテストで銀メダルに輝き話題となっている店があります。
このように、具体的に示すことで、陳腐な「人気」というワードを使わなくても人気ぶりやすごさを表現できます。また、人気の程度や特徴についても補足できます。
【NGワード②=こだわり】
これも、とてもよく使われるワードですが、そもそもは「必要以上に気にする」というような意味の言葉です。過去にこだわるとか…。ただし、グルメ特集などでは、「特に注力する」「絶対に譲れない部分」というような肯定的な表現として使われています。表現する側としては、とっても便利なワードですが、そもそもの意味と、工夫がないことから勝手にNGとしています。別の言い方の例を挙げます。考え方は「人気」の場合と同じです。
例①)パティシェは、最低1か月に3回は、全国の卵産地を訪ね、理想のシュークリームを表現できる卵を探します。
例②)鶏卵農家に生まれたパティシェ、卵を見る目は折り紙付きです。
例③)パティシェがシュークリームに使うのは、100個仕入れた中から選りすぐった3個だけ。
このような魅力的な背景を「こだわり」という汎用表現で台無しにしてしまうのは、失礼だと思います。
【NGワード③=密着】
3か月、1年、3年と取材を続けて、取材対象者と取材者の信頼関係が生まれたとき、はじめて使えるワードだと思います。シュークリームを作るところをずっと撮影していた程度では軽々に使いたくない言葉です。
言い換えるとすれば、
「パティシェのシュークリーム作りに密着しました」→「パティシェのシュークリーム作りには驚きがいっぱいでした」とか。
【NGワード④=数時間】
数時間、数回、数日…、いったい何時間?何回?何日? 受け取る人によってかなり幅があります。身近な人たちに、数時間とは何時間くらいか質問してみました。多かったのは3~4時間ですが、2~3時間、7~8時間という人もいました。傾向的には若い人ほど小さい数字、年齢が上がるにつれ大きい数字になるようです。私の場合、数時間は4~5時間です。これほど幅があるのに、受け手側に任せてしまうのは、番組の作り手としては無責任だと思います。少なくとも「3~4時間」とか、「およそ3時間」とか、誰もが同じ理解ができる表現をすべきだと思います。
【NGワード⑤=さっそく】
店に入ってまず試食するなら、どうぞ使ってください。店やパティシェの紹介、作り方などさんざん見せた挙句「さっそく」いただいてみますは、意味が分かりません。でも、必ずといっていいほど使われるワードです。ちなみに、さっそくは「早速」と書きます。
一度、「人気」「こだわり」「密着」「数時間」「さっそく」に注目してテレビ番組をご視聴ください。ツッコミどころ満載ですよ。