愛媛FCの降格を検証する②

ニュース解説

12月5日最終節試合後の

セレモニーが終わった後、

愛媛FCのフロント2人だけ

(村上忠社長&青野大介GM)の

個別会見が開かれました。

降格の要因と復活へのプラン発表の場と

誰もが思っていましたが

およそ70分間にわたった会見は

予想以上に険悪な雰囲気で終始しました。

降格直後の会見なので

和気あいあいと行くとは

思ってませんでしたが

質問と答えが

かみ合わない場面が多く

質問者側(メディア)の苛立ちが

画面から伝わってきました。

私は試合直後に別仕事があったので

この会見前にスタジアムを後にした為、

後日、見直したVTR映像と

現場にいた人の感想しか聞けていないので

正確ではありません。

恐らくメディア側が

一番フラストレーションを感じたのは

具体的な改革プランがないのに

“天然芝の新練習グラウンドが出来る”

という、ハード面の改善だけで

復活への答えを見出しているように

聞こえたからでしょう。

事実、村上社長の挨拶は

謝罪後の第一声で

降格の一番の要因を

「特に選手たちの練習環境を

充実できなかった」とし、

「現在の梅津寺練習場は人工芝なので

膝や腰を痛める選手が多かった」

「もう少しで引き分け、

もう少しで勝てる試合が多かった。

練習環境が整っていたら

違っていたと心より悔やんでいる」

と切り出しました。

「今、サンパーク(松山市井門町)に

天然芝の練習場を構築中です。

自分たち専用の練習場を

選手に提供できる」

だからもう大丈夫です。

という風に聞こえたのでしょう。

(建設中のサンパーク練習場)

練習環境はもちろん大事です。

固い地盤の人工芝でプレーをすると

足への負担が大きく

怪我につながりやすい。

また、怪我をした選手にとっても

治りにくいことが実証されています。

移籍するときは

天然芝練習場の有無でチームを決めたり、

人工芝の

練習場しかないチームにいたせいで

選手生命が短くなる。

そんな選手を

実際に何人も見たことがあります。

年齢にかかわらず

プレーヤーにとって

天然芝の練習場というのは

それくらい重要なことです。

今、愛媛FCが自前で持っている

練習場(梅津寺)は人工芝です。

本番と同じ天然芝で練習する為には

北条やレインボーハイランドまで

出掛けなくてはなりません。

天然芝の練習場を持つことは

愛媛FCの悲願でもありました。

村上社長は私財1億円を投じ

来年春に完成させます。

この執念は凄いことです。

“愛媛FC愛”以外の

何物でもないでしょう。

が、

この会見で最初に聞きたかったのは

練習場の話ではなかったのでしょう。

他の話もしましたが

その後も

「設備の話になると

元気になるんです!」と

天然芝の新練習場を

金科玉条のごとく持ち出すので

質問者たちの苛立ちは募るばかりでした。

一方、青野GMが分析した降格要因は

「一体感がなかったこと」と話しました。

「プレー基準、メンタル基準で

統一感がなかった」

ボールをしっかり繋いでいく

理想を追求するスタイルなのか、

ゴール前にボールを素早く入れ込む

現実的なスタイルなのか、

試合によってバラバラになり

選手たちからも不満が出ていました。

それらについては

「再現性の高い戦術、

共感を得られるヴィジョン。

それを春先に作ろうとしたが

出来なかった。

来年1月には

クラブに係わる人たちと

共有しながら完成し

シーズン前には発表したい」と

明言しました。

「J2に上げるだけでなく、

フィロソフィを根付かせるのが

自分の責任」

職を辞することで責任を取るのではなく

チームを再建させる責任を選びました。

こちらのほうが難しい。

敢えて厳しい道を選び

逃げなかった青野GM。

岡田メソッドと同じじゃないか

と言われたくないので

かたくなに

その言葉を使わなかったと

思うのですが

愛媛FC版のメソッド、

“愛媛メソッド”の構築です。

中心選手がいなくなり、

Jリーグからの分配金が減る中で

他のJ3チームは強化を進めている。

本当に1年でJ2復帰が出来るのか。

今は懐疑的な論調ばかりです。

(クラブハウスは「まだ半分ほど」)

70分の会見ラスト。

違ってたらスイマセンと

前置きした上で

村上社長が言いました。

「FC今治は

岡田さんからのトップダウン型で

愛媛FCはボトムアップだと思います。

地味で時間がかかるかもしれません。

でも、チームの原点は

まったくブレていないです。

“優れた選手と指導者を輩出すること”」

これだけでも

愛媛FCが存在する価値はある

と思ってます。

まだ結果は誰もわかっていません。

天然芝の練習場一つで

劇的にチームが強くなるかもしれないし

春先に発表されるヴィジョンが

素晴らしいものかもしれない。

やってもいないのにダメだというのは

スポーツの持つ意義と

一番離れているような気がします。

ゴチャゴチャ批判する前に

まずはお手並み拝見といこうじゃないか。

最近、私はそう思っています。

 

記者プロフィール
この記事を書いた人
江刺伯洋

江刺伯洋(えさし はくよう)1971年3月1日松山市生まれ。
入社以来アナウンサーとして主にスポーツやラジオを担当。特にサッカー実況は少年からJリーグまで全カテゴリーをこなしてきた。
著書に愛媛FCのJ昇格劇を描いた「オレンジ色の夜明け」、「群青の航海 FC今治、J昇格まで5年の軌跡」がある。【現担当番組】DAZNのJリーグ中継(FC今治、愛媛FC)、ラジオ生ワイド「江刺伯洋のモーニングディライト・フライデー」(毎金曜午前07:15~11:09)など。

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