五輪で中断していたJ3リーグが昨日、
1か月半ぶりに再開しました。
試合前、久しぶりのホームゲームに
今治の夢スタジアムは
高揚感で包まれてましたが
実は放送席は大慌てでした。
キックオフ1時間前に配られた
公式メンバー表に書かれた選手名が
我々の事前予想と大幅に違っていたからです。
普通は直近の試合や練習などの情報を元に
当日の先発メンバーを予想します
(ほぼ合ってます)が
この日はベンチ入りメンバーを含め
半分以上の選手が
我々の事前情報と違っていたのです。
「…ついに布啓一郎監督が本気を出してきた!」
実況資料を大慌てで作り直しながら
私は興奮を抑える事が出来ませんでした。
シーズン途中で就任した布啓一郎監督。
中断前までは前監督(リュイス)の
セレクトした選手をベースに戦っていましたが、
成績は中々好転しませんでした。
ベテランの名将は
この長い中断期を狙っていたのでしょう
ついに自分のカラーを全面に押し出してきたのです。
「しっかりとキャンプをやれた感じで
とても有効だった」
五輪で世間が乱舞している中、
布監督はほぼ毎週、
実戦形式のトレーニングマッチを組み
自分のスタイルを落とし込むことに
フォーカスしていたのです。
「気がつけばまさかの順位(14位)で
ショックだったが
途中就任の布さんにとってこの長い中断期は
メチャクチャありがたかったはずだ」
新スタジアムの資金調達で
忙殺されていていた岡田武史会長。
不調の波を一旦遮断するために
トップチームにとっても
監督にとっても
この1か月半は恵みの中断期でした。
しかし
シーズン途中で主力メンバーを大幅に変え
システムまで変える(4-2-3-1→4-4-2)というのは
大きな賭けでもあります。
上手くいけばメルクマールになりますが
失敗すれば取り返しがつかず、
そのままシーズン終了を迎えます。
果たして結果は…
0-0のスコアレスドローでした。
しかも退場で一人少なくなった相手に
またしても勝ち切れなかった痛い引き分けでした。
ただセンターバックコンビを
大卒ルーキーで組ませた中で
クリーンシート(無失点)だったことは
好材料でした。
もちろん必死で戦った結果ですので
誰のせいでもないし
素直に受け止めて前に進まなければいけません。
一方、J2で戦う同朋も
モヤモヤから解放されません。
今治の試合が終わった1時間後。
愛媛FCのホームゲームが
ニンジニアスタジアムで行われましたが
主審の微妙なPK判定の結果、0-1で敗戦。
ようやく抜け出したと思った降格圏に
再び舞い戻ってしまいました。
“史上初!愛媛FC&FC今治同日ホームゲーム勝利!!”
の見出しを夢見ていたのですが
それは9月12日までお預けとなりました。
ところで
昨日、今治の実況をしているとき、
ある違和感を覚えました。
それは以前から感じていたけれど
昨日まで自覚できていなかった事です。
今のニンスタ(愛媛FCのホームスタジアム)にあって
夢スタ(FC今治のホームスタジアム)に無いものに
気が付いたのです
(以下、個人の意見です)。
それは
ピッチ上やスタジアムを覆う
“このワンプレーで地獄に堕ちる
(降格する)かもしれない”という
ヒリヒリする様なプレッシャー、重圧感です。
ご存じのようにJ2は
今季下位4チームがJ3に降格、
愛媛FCはその真っただ中で
揉みくちゃにされながら奮闘しています。
一方、J3は昇格は有れど降格はありません。
もしJ3に降格制度があれば
FC今治もその真っただ中に居ることになります。
いまさら何を言っているのだ
そういうルールだから当然だろ!
と思われたあなた。
まあ、最後まで低劣な御託をお聞きください。
現状のJリーグはJ1をトップに
J2、J3がその下位に存在し
年間リーグ成績が良いと上部リーグに昇格し
悪いと下部リーグに降格します
(*プレーオフ、入れ替え戦もある)。
ですがJ3の直ぐ下に位置するJFLへは
たとえ年間リーグの成績が悪くても
降格はしません(基本)。
これはJFLがアマチュアリーグであり
プロのJリーグとは成り立ちが違う別組織なので
同じグループではない事によります。
日本のサッカーリーグ構造を
愛媛を例にザックリいうと
下から中予リーグ→県リーグ→四国リーグ→JFL
(ここまでアマチュアリーグ)
→(ここからプロリーグ)J3→J2→J1という
ピラミッド型になります。
昇格や降格でカデゴリーを移動する場合は
ほとんどが年間リーグの成績
(+プレーオフや入れ替え戦など)で決定されます。
ただ
JFLからJ3へ昇格する時だけ異例で
レギュラーシーズン後に開催される
“地域チャンピオンズリーグ”と言われる
超過密日程の別大会で勝ち残らなければ
J3へは昇格出来ません(*他にも細かい条件有)。
逆に、いくら成績が悪くても組織が別なので
J3からJFLに降格することはありません(今の所)。
全世界を調べてないので断言できませんが
降格が無いというリーグが存在する
サッカーピラミッド構造は
おそらく日本だけです。
サッカーの母国、イングランド。
プレミアリーグ(1部)をトップに
チャンピオンシップ(2部)→リーグ1(3部)
→リーグ2(4部)…と11部!まであり
全カテゴリーを
全英フットボール協会が管轄しています。
なので単純に成績上位が上部リーグに昇格し
成績下位リーグが降格する
わかりやすいピラミッド構造で出来ています。
(*シーズン後入替戦、
ペナルティによる降格など例外もアリ)
他、ドイツはアマチュア含め12部、
イタリアは10部まであるようで
基本、同じようなピラミッド構造で
上がったり下がったりしているようです。
日本サッカーが世界に追いつこうとしているのなら
海外ばかりに目を奪われるのはやめて
今こそ自国に目を向けるべきではないでしょうか。
つまりJFL⇔J3への昇降格もサッカー先進国に倣い
シンプルに成績上位チームが昇格し
成績下位チームが
降格するようにすべきだと思うのです。
(JFLの歴史や伝統はリスペクトしつつ)
J7(中予リーグ)→J6(県リーグ)
→J5(四国リーグ)→J4(JFL)→J3→J2→J1
このように
全てのリーグの入れ替わりを年間成績で決定し
上位チームが昇格、
下位チームが降格するようにすれば
今、ニンスタを覆っている
“そのワンプレーで地獄(降格)が決まり
そのワンゴールで天国(昇格)が決まる”
あのヒリヒリ感を全カテゴリーで味わえます。
あのヒリヒリ感は
直接観に行かなければ感じる事は出来ません。
愛媛FCの川村選手や
唐山選手が背負い込んでいる
凄まじい重圧の中でしか感じられないプレッシャー。
受け止め、打ち勝つことでしか
ブレイクスルーできません。
FC今治の選手に不満があるわけではありません。
身近で観させて頂いて熱い想いは
ヒシヒシと伝わってきます。
ただ今のニンスタには
タイトロープを渡る戦士を
息をするのも忘れ祈りながら観る
会場の緊張感があり、
毎試合後に待ち構える安堵感と開放感、
もしくは吐き気を覚えるほどの絶望感が交差します。
昇格する時の幸福感を味わい続けるのが
一番いい事ですが
リバプールでもマンチェスター・シティでも
それは不可能です。
サバイバルを生き残る1プレーごとの
天国と地獄のジェットコースター。
皇国の興廃、この一戦にあり!を地で行く
フットボールの深淵にしかない究極のドMな醍醐味を
今の夢スタでも味わいたいと思ったのです。
J2に行ったら味わえるやないか!
という話ではありません。
日本プロサッカーリーグ専務理事の木村 正明さんが
「昇格降格した時に町に“うねり”が起こるんです。
これはサッカーにしかないんです」
と今治を訪問した時に仰いました。
“J3は降格が無いから”という安心感は
我々メディアを含めて何か大きなものを
失っている気がするのです。
なので
とどのつまり
何が言いたいかというと…
Jリーグの偉い人~
そろそろ本気でJ4リーグ、作りませんか。