ニュースのウラカタ#18 「西日本豪雨、そのとき」

ニュース解説

ニュースのウラカタ#18
「西日本豪雨、そのとき」

7月7日、愛媛県民にとって
忘れてはならない日です。

ニュースCH4では、
発災からちょうど3年となるきのう(7日)、
西予市野村町の乙亥会館から、
全編生中継で被災地の今をお伝えしました。


3年前、2018年7月の豪雨では、
土砂崩れや浸水によって
県内で27人が亡くなり、
災害関連死を含めると33人が命を落としました。

把握できているだけで、
家屋被害は、全壊627棟
半壊3118棟
浸水2769棟。

農業被害額475億2764万円
林業被害額174億6645万円
水産業被害額4億9903万円。

今回の生中継では、私も現場に赴き、
中継車の中から、
キャスターの動きやコメントの確認、
時間管理、
カメラワークの指示や
カメラの切り替えなどを担当しました。

被災地の3年を目の当たりにし、
復興は着実に進んでいると感じる反面、
松岡キャスターの
「被災した方々が
豪雨以前と”同じ日常”を取り戻すことはない。
新しい”別の日常”を手に入れたのだと感じた」に
共感を覚えました。

今回の中継に携わって思い出したのが、
3年前、発災直後に生放送した報道特別番組です。

県内で被害が広がっていることが、
徐々にわかってきた7日午後、
翌日の「もぎたてテレビ」の放送を
豪雨の特別番組に変更することが決まりました。

しかし、特に南予は、
川が増水し、道が寸断され、
取材に向かうことすら困難な状況。

どこで何が起きているのか、
どこでどんな撮影ができるのか、
全く手探りの状況からのスタートでした。

放送までのタイムリミットは20時間、
状況を考えると、
取材したあと編集が必要なVTR素材は
多くは揃わないことが明らかです。

そこで、とにかく中継班を多く出して
被災地の”今”を繋いでいく方法を取ることにしました。

中継は5班出動、ベテランスタッフも含め
記憶にない規模です。

避難勧告・指示、雨雲レーダー、
河川情報、道路情報などで
安全とルートを確認しながら、
ほとんどの中継班は夜のうちに
目的地に到着しました。

しかし、多くの土砂崩れが発生し、
10人以上の安否が確認できていなかった
宇和島市吉田町の海岸線には、
どうしても辿りつけません。

そのとき、スタッフの1人から
「船で行けないか?
知り合いの漁師さんにお願いしてみる」との提案。

漁師さんが無理を聞いてくださり、
船を出してもらえることになったのですが、
今度は、海面に大量の流木があり、
現地に近づけるかどうかわからないという状況…

それでも、何とか朝までに、
海から吉田町のみかん山が崩落した現場に到着しました。

30人ほどが参加した深夜の全体ミーティングでは、
叩き台の構成案(台本のたまご)を手に
様々な議論が交わされました。

明日の段階で一番伝えるべきことは何か?
そのために必要な情報は何か?映像は何か?
被災地の方に迷惑をかけないためにすべきことは何か?
救助活動の妨げにならないためにすべきことは何か?
してはいけないことは何か?
スタッフの安全をどう守るか?

議論の末、番組の内容がほぼ固まってから、
台本を作りました。
しかし、書き進むにつれ、
不確定要素ばかりであることに気づき、
不安が募るばかりでした。

そして、漸く台本を書き上げた8日午前6時前、
宇和島市と愛南町に
「大雨特別警報」が発表されました。

当初、番組は”豪雨後の被害”を主眼に構成していましたが、
特別警報が発表された上は、
今、命を守る放送”が求められます。

放送開始まで6時間、
番組を構成し直し、台本を書き直します。

打合せもリハーサルもそこそこに、
生放送を迎えました。

生放送中の記憶はほぼありませんが、
放送後、愛媛の報道機関として、
命を守ることを呼びかけ、
かつてない大災害の一報を伝えられたことに
ひとまず安堵したことは覚えています。

これは、そのときの台本の一部です。
西日本豪雨と呼ばれるのは、後のことです。
【台本】大雨特番 20180708 確定 ウラカタ用抜粋

きのう、中継準備を進める合間に
肱川を眺めました。

肱川の源流のひとつ、
宇和町の岩瀬川は、
幼い頃、私の一番の遊び場でした。

記憶にあるのは穏やかな流れ…

あの日、多くの被害をもたらしたことが
未だに信じられません。

記者プロフィール
この記事を書いた人
宇都宮宏明

西予市宇和町出身、1996年 南海放送入社後、主にテレビ番組制作部門。
「もぎたてテレビ」のディレクター・プロデューサーなど担当。
2018年~「ニュースCH4」デスク(自称”世界で一番優しいニュースデスク”)。

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