5月27日深夜、今治市沖の
瀬戸内海で起きた
貨物船とケミカル船の
衝突事故から一週間。
これまでに1人が死亡、
2人が行方不明のままです。
事故原因の調査が進められていますが、
依然、分からない点が多くあります。
実は、事故原因以前に
記者が勝手に思い込んでいる
”先入観”があることに
取材を通じて気付かされました。
どんな”先入観”に惑わされたのか?を中心に
事故から一週間を振り返ります。
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1.来島海峡は潮流が速く
独特の航行ルールを持つ”魔の海峡”
だから事故は起きた?
来島海峡航路には大島をはじめ
小さな島が点在していて、
島の間を縫う形で
2つの航行ルートがあります。
“西水道”と“中水道”です。
陸上の道路に例えると
島を中央分離帯にして
2本の道(水道)があるわけです。
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2本の道(水道)は必ず一方通行
船舶がすれ違うことはない
もちろん、交差もしない
水道を通過する船舶には
守るべきルールがあります。
それは
必ず同じ方向に進むこと、
つまり一方通行。
同じ水道内で
船舶が対向して(すれ違って)
進むことはありません。
私は当初、「今治市沖の
来島海峡付近で船舶が衝突」
という一報を、
「来島海峡で衝突」と思い込み、
”海の難所”だから
”来島海峡で衝突した”と
勝手に思い込みました。
しかし、現実には航行ルートが
交差しないシステム(ルール)の
来島海峡航路では、
追突や座礁事故のリスクはあるものの、
対向による衝突事故が起きる可能性は低い
というのが取材しての実感です。
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2.事故が起きたのは
そもそも来島海峡ではない
実は、事故が起きたのは
来島海峡航路西側の海域で、
来島海峡航路(の中)ではありません。
事故現場海域は来島海峡航路の出入り口に
あたる場所です。
この出入口付近に船舶が入ると
海上保安庁が海峡の見える高台に設置した
「来島海峡海上交通センター」が
海峡航路を通る船舶の動きを
レーダーで把握します。
そして船舶に、海峡航路での航行に必要な
▼進むべき進路
(どの一方通行の水道を航行するか)や
▼水道の混雑具合などを
それぞれの船に無線で知らせます。
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3.海峡航路の外、だから事故が起きた?
つまり、航路が交差する可能性がある
来島海峡航路の外だったから
事故は起きたとも言えます。
見方を変えれば、
来島海峡の事故を
防止する上での”盲点”が
海峡航路ではなく、
海峡航路の出入り口に潜んでいた
可能性があります。
海上保安部では、事故直前に
来島海峡航路を通過し終えた「白虎」、
そして、来島海峡航路の
西側海域を航行していた
「ウルサン パイオニア」の2隻の
来島海峡海上交通センターとの
無線交信の内容については
明らかにしていません。
来島海峡では
過去に多くの事故が発生しています。
周辺では1993年、94年、96年に
死者や行方不明者も出ています。
その反省や教訓から1998年、
来島海峡海上交通センターが
設置された歴史を持ちます。
しかし、来島海峡航路の安全性は
格段に向上したものの
果たして、その出入り口での安全性は
どうなっていたのか?
検証する必要があります。